2025年9月18日、世界陸上東京大会、男子400m決勝での中島佑気ジョセフ 写真/ロイター/アフロスポーツ
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(スポーツライター:酒井 政人)

予選で44秒44の日本新記録

 東京2025世界陸上の男子400mで日本の歴史が塗り替えられた。分厚い壁を何度も打ち破ったのが中島佑気ジョセフ(富士通)だ。

 まずは大会2日目(9月14日)の予選(各組2着+2)。2組4レーンに出場した中島は大声援を背中に受けると、最後の直線でグングンと上げていく。そしてB.ヌドリ(ボツワナ)に次ぐ、2着でフィニッシュ。着順で準決勝を決めると、そのタイムに会場が沸いた。

 電光掲示板に【44.44】という数字が並ぶ。中島はサングラスを外して、笑みを浮かべた。

 自己ベスト(44秒84)を大幅に塗り替えると、佐藤拳太郎(富士通)が保持していた日本記録(44秒77)も0.33秒更新したのだ。

「外側の5~7レーンに強い選手がいましたが、焦らずに自分のリズムでレースを進めて、ラスト150mから前の選手を捕まえていこうと思っていました。予定通りという感じですね」

 300m通過は4番目だったが、そこから3人を抜き去った。そして日本記録については、「自分のレースができれば44秒中盤は出るだろうなと思っていました」とさほど驚いた様子はなかった。

「まずはやるべきことをしっかりやれたかなと思いますが、あくまで決勝に進むのが目標です。できれば決勝で勝負したい。自分にはそのポテンシャルがあると分かっていますから」と中島。頼もしい言葉を残して、次なる戦いに向かった。