2024年12月22日、全国高校駅伝男子で2年連続4度目の優勝を果たした佐久長聖、アンカーの石川浩輝 写真/共同通信社
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(スポーツライター:酒井 政人)

箱根駅伝に出場したOB選手は59人、全国トップクラスの実績を誇り、12月21日に行われる全国高校駅伝3連覇を目指す長野の佐久長聖高校。駅伝監督である高見澤勝氏の『佐久長聖はなぜ強いのか?「人」を育てチーム力を上げる指導メソッド』(竹書房)の構成を担当した酒井政人氏が強さの理由、「駅伝力」の真髄に迫ります。(JBpress)

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自由時間はほとんどないが…

 12月21日に京都で開催される全国高校駅伝。都大路を目指す高校生ランナーたちのなかで特別な輝きを放っているのが佐久長聖(長野)だ。

 一昨年と昨年の大会を連覇して、2時間1分00秒の日本高校最高記録も保持している。OBは箱根駅伝に59人出場。男子マラソンの日本記録保持者である大迫傑、同10000mの鈴木芽吹らも出身者だ。大迫は東京から、鈴木は静岡から冬は極寒となる佐久で青春時代を過ごしている。

 佐久長聖はなぜ強いのか? まずは彼らがどんな生活を過ごしているのかを紹介したい。

 駅伝部の選手は寮生活を送っており、朝は5時10分に起床。身支度を整えて、寮から約1.5km先にあるグラウンド(クロスカントリーコース)に各自で移動する。そして5時55分に集合して朝練習がスタートする。中心となるメニューはグループジョグ(といってもキロ4分10秒~3分40秒ほどのペース)で、移動を含めて走行距離は10km弱だ。加えてドリルや補強なども行う。

 寮に戻るのは7時半前ぐらいで、各自で用意された朝食を摂り、8時00分~15分は掃除の時間だ。玄関、廊下、食堂、トイレ、お風呂、洗面所など共用部分を各班で分担して実施する。

 8時25分までには寮を出発して、学校では普通の高校生活を送ることになる。授業が終わった後は一度寮に戻り、16時20分にグラウンドに集合して本練習だ。

 練習終わりの集合が19時00分。その後は各自で準備された夕食を済ませて、ようやく「自由時間」となる。その間に入浴して、部屋でスマホ(※消灯後から本練習が終わるまでは寮監に預けている)をいじることもできる。

 そして20時30~50分に夜の掃除があり、点呼・消灯が21時10分だ。ただし、部屋の電気を消した後もストレッチや補強などひとりで静かに過ごすのは許されている。また食堂では22時50分まで勉強もできる。

 選手たちに自由時間はほとんどない。しかし、高見澤勝監督はあえてタイトなスケジュールを組んでいるという。

「走るための能力は日々のトレーニングで鍛えることができます。しかし、メンタル面は日々の練習だけでは強化できません。『我慢する力』や『あきらめない心』は日々の生活や取り組みのなかで育てていくものだと思っています」

 佐久長聖は2007年の全国高校駅伝で“0秒差”で2位になっている。同タイムで負けたことのある唯一無二のチームだ。そのため高見澤監督は「時間」を守ることを選手たちに徹底させている。

「我々はタイムを争う競技をやっているので、『時間』に関しては厳しく言っています。一般的には『1分、1秒を大切にしなさい』と言われることが多いですけど、佐久長聖は『0.1秒、0.01秒を大切にしなさい』と指導しています。それくらい時間は大切なんです」