トレーニングの基本は「土台作り」 

 過密スケジュールの日々を過ごしている佐久長聖の選手たち。普段はどんなトレーニングをしているのか。他の強豪校と比べて、練習量はさほど多いわけではない。

 基本、月曜日から土曜日は集合して朝練習を行い、日曜日だけは朝練習がフリー(自由)。本練習は月曜日のみ「治療日」というかたちになっている。

 本練習は火曜日がジョグで、試合後など疲労感があるときは補強だけで終わるときもあるという。水曜日はポイント練習で、10000mのペース走やビルドアップ走が中心だ。試合が近くなるとインターバル走も行う。

 木曜日はジョグになり、選手の状態を見て、休養に充てることもある。ジョグは長くても12km。グループでやるときと個人でやるときがあり、試合前は各自で行うことが多い。金曜日もジョグになるが、翌日のポイント練習に向けて、キレを出すように、距離は8~10kmと少なめだ。

 そして週末にポイント練習を実施する。セット練習をするときは、土曜日がスピード練習で、日曜日にじっくり走るようなイメージだ。どちらかというと土曜日をメインに考えていて、2000m×3本というハードなメニューをやることもある。

 高校生の5000m13分台ランナーを最多25人も輩出しているが、意外なことにペースを上げたスピード練習はさほどやっていない。それは将来を見据えての“選択”でもある。

「脚ができていない状態でスピード練習をガンガンやっても故障のリスクが高くなるだけです。若いうちにスピードをつけておく方法もあると思うんですけど、私はスピードを生かすためのカラダを作る方が重要かなと感じています。そういう意味では佐久長聖のトレーニングは『土台作り』のイメージが強いかもしれません」

 一方で走る前には「動き作り」として15種目のドリルを実施。動きが良くないときは、やり直しをさせるなど徹底的に行っている。

「昔と比べて、子供たちの方がカラダは弱くなってきており、運動能力も一昔前の子供たちより劣っていると感じる部分があるんです。そのため根本的なところを強化しないといけません。スピード練習をポンッと入れたタイミングで故障する子供が多いので、そのスピード練習に耐えられる身体作り、足腰作りが必要だと思っています。

 トレーニング後には補強もやります。選手が疲れていて、ちょっと走るのは控えた方がいいなというときは1時間くらい。長いときは2時間くらいやるときもあります。これだけ補強に時間をかけているチームはなかなかないんじゃないでしょうか」

 それでも佐久長聖からは5000mを13分台で走る選手がバンバン出ている。どんな理由があるのだろうか。

「佐久は標高が700mありますし、クロスカントリーコースを走ることで、起伏の対応、接地のタイミング、身体の使い方などが自然と身につきます。それから過去の先輩たちの結果やデータがあるので、同じような練習ができれば、先輩たちくらいは走れる、という良い意味での“カン違い”が子供たちに起きているんです。またポイント練習を誰が引っ張るかは、基本、子供たちが決めています。インターバル走は1本ごと、ペース走は1000mごとで入れ替わるかたちです。うちの選手は練習で引っ張る機会が多いので、それがレース時の先頭を押し切れる力につながっていると思っています」

 全国高校駅伝だけでなく、箱根駅伝でも快走する選手が多い佐久長聖。ド派手な活躍の裏にはストイックな生活と地道な努力があった。

佐久長聖はなぜ強いのか?(後編)はこちら