井上を超える選手は現れるか?

──仮に負けたとしても、その試合は負けたボクサーの成長の糧になる、ということなのでしょうか。

森合:井上選手と闘うことは、その階級では間違いなく、最も注目される試合になります。

 勝てば当然、評価は上がります。いい試合をして負けたとしても、決して評価が下がることもありません。ただ、先ほど申し上げた通り、ボクサーは勝てると思ってリングに上がっています。

 2022年12月13日に、バンタム級4団体統一戦で井上選手と闘ったポール・バトラーは、試合に敗れたあと、控室で1時間以上、独りでうなだれていたそうです。この試合は、下馬評では圧倒的に井上選手が有利でしたが、バトラーは勝ちを信じてリングに上がっていたのです。でも、結局、リング上で自分を全く表現することができず、絶望を味わったのでしょう。

「絶対に勝つ」「勝てる」という自信が持てるくらいの準備をしてリングに上がっても、実際に井上選手と対峙をすると、イメージをはるかに超える強さだった。何もできずに終わり、本当にショックだったと思います。

──井上尚弥を超える選手が出てくるとしたら、それはどのような選手なのでしょうか。また、長く井上選手を取材してきた森合さんは、どのような選手に井上尚弥を超えてほしいと思われますか。