山本 高市さんが女性の支持がほとんどないことも、選挙の顔にはなりにくい要因のひとつと見られている。

野党から見れば「石破はやっかい、高市は攻めやすい」

米重 高市さんは選択的夫婦別姓に反対していますが、その代わりに「通称使用の拡大」を主張しています。これは、選択的夫婦別姓を臨む人の意見の根っこ、つまり世論が考える問題の本質があまり分かっていない証拠です。

 選択的夫婦別姓というのは、結婚した女性が「もともとの姓を名乗れなくなって不便だ」とか「生活上不都合がある」とかという話ではなくて、根本的には社会に出ている女性が「個人」として人権を認められていないという個の権利の問題。要は個の権利と、男性を中心とした明治民法の家制度の名残のどちらを優先するかということ。ですから、「夫婦別姓の代わりに通称使用の拡大を」というのは、世の女性からすれば問題の解決策になっていない。

米重克洋氏(写真:小檜山毅彦)*9月17日撮影
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 世論調査のデータを見ると、高市さんの支持層は一貫して男性偏重です。高市さんのそういう姿勢や態度が、最後まで女性支持層を増やせない大きな要因になっていた。高市さんがしたのはもともと安倍さんファンだった右寄りの、中高年男性層を中心にアピールし続けること。その層を固めきることで、総裁選で候補者が9人もいたおかげで党員票で1位にはなりましたが、候補者がもっと少なかったら同様の結果にはならなかった可能性が高いと思う。

 高市さんが今後も総理大臣を目指すのであれば、そのプレースタイルや党内での立ち位置を必ず変えないといけないと思います。無党派層には女性が多いので、女性から「自分たちの利益を代弁しているとは思えない」と見られていたら、選挙では致命的です。

山本 高市さんが総裁になっていたら立憲民主党が喜んだはずです。

米重 実際、知人の立憲の議員も「高市総理待望論」を私に漏らしていました。立憲も保守的な政治信条を旨とする、野田佳彦元首相が代表になりました。「野田vs.高市」なら、裏ガネ問題や政治改革、現実的な外交・安全保障、選択的夫婦別姓などなど、あらゆることで立憲に有利な争点設定をしやすくなる、という意見です。