自民党新総裁は誰に?(写真:共同通信社)自民党新総裁は誰に?(写真:共同通信社)

(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)

失笑ものだった「ルールを守れない人にルールを守る政治はできない」発言

 今日、自民党の新総裁が決まる。

 事実上、岸田総理の次を担う新しい総理大臣が決まるということだ。それだけに影響は広く国民全般に及ぶが、自民党総裁選の選挙権は自民党の国会議員と党員等に限られている。

 自民党総裁選も、ほぼ並行して行われた立憲民主党の代表選においても公職選挙法は適用されない。あくまで政党による「選挙的なもの」に過ぎない。日本でも政党を規定する政党法を制定すべきだという議論は根強く、自民党内でも関心が向いた時期もあったが、現在の総裁選候補者たちにはあまり関心がなさそうだ。

 そういえば各候補者は岸田政権の成否を振り返り、表明したただろうか。

 ただでさえ国会議員は憲法第四十三条が「全国民を代表する選挙された議員」と規定するようにすべての国民の代表なのだが、その自覚はあるだろうか。

 そして投票権を持つ自民党員の肩には投票権を持たないものも含めて全ての国民の先行きがかかっているのだが、その自覚はあるだろうか。

 自民党員の数は1990年代の初頭に500万人を超えたのをピークにし、その後、減少に歯止めがかからないまま現在ではとうとう110万人を割り込んでいる。2000年頃と比べても半分以下になっている。各党同様だが、自民党も党員増加、党勢拡大に躍起だ。

 ただ、こう書くと「自民党と自民党員の影響力が弱まったのか」と感じる向きもあるかもしれない。半分はそのとおりなのだが、もう半分は間違いだ。

 党員数減少と高齢化が進むなかで、自民党関係者ひとりひとりの一票の重みと責任はむしろ増している。およそ自民党国会議員と日本国民のおよそ100分の1の自民党員が自民党総裁と将来の総理大臣を決めているということでもある。これらのこともまた関係者には自覚されるべきだ。それほどに自民党総裁選は重たい政治イベントなのである。

 選挙戦の途中、現職幹事長から「ルールを守れない人にルールを守る政治はできない」という名言か迷言が飛び出した。他候補が事前運動的にリーフレットを自民党員に送付したことを念頭に置いた発言だ。

【速報】自民党総裁選 高市氏リーフレット郵送問題 茂木幹事長「ルールを守れない人にルールを守る政治は出来ない」 | TBS NEWS DIG 

「ルールを守れない人」を批判した茂木敏充氏(写真:共同通信社)「ルールを守れない人」を批判した茂木敏充氏(写真:共同通信社)

 多くの国民は失笑を禁じ得ないはずだ。なぜ内閣支持率が低いままなのか。例えばNHKの月例世論調査でいえば、昨年末から現在まで一貫して3割以下で推移しているのか。自民党の政党支持率も3割を切ったままの低水準だ。その起点をすっかり忘れている。政治とカネの問題をどう解決するつもりでいるのか。 

「ルールを守れない人」と指摘された高市早苗氏(写真:共同通信社)「ルールを守れない人」と指摘された高市早苗氏(写真:共同通信社)

 果たして、この先自民党に「ルールを守る政治」は可能なのだろうか。なぜ信頼できるといえるのだろうか。多くの国民に選挙権はないが、しかしこの総裁選を静かに、それなりに関心を持って見守っているはずだ。