(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
「素顔」を見せるために「編集された」ショート動画
政治に詳しい人は鼻白むだろうが、最近は政治家も「政治家らしくない」装いを見せるようになってきている。ネクタイを外してみたり、ポロシャツを着てみたり、なによりSNSや動画を駆使して「素」の姿を見せようと苦心している。
政治家は人気商売だ。何をするにしても当選して初めてなにかをなすことができる。当選できなければ、文字通りただの人である。
好印象を獲得し、次の選挙に当選することが権力を手に入れる唯一の手段であり、選挙に勝たなければ、どんなに優れた理念や政策があっても、それを実行に移すことはできない。憲法で定められた唯一の立法府の一員を構成するための資格審査はシンプルだがなかなか厳しく、そしてよくできている。
多くの明確な支持政党を持たない人々の政治家に対する印象や支持は政治家の「表向きの姿」に強く影響される。そしてその「表向きの姿」は時代によって変わる。
テレビや新聞が主戦場だった時代から、明らかにネット、そして動画が主戦場になりつつある。
選挙や最近の総裁選でも突如として発信量が増えたり、唐突なキャッチコピーを掲げたりする政治家を多数見かけたが、背後に広告代理店やPR企業、コンサルタントが多数関わっている。
政治家の発信でさえショート動画の効果音やテロップ、演出はむしろないほうが不自然とも思えるほどにあまりに「自然」だが、誰かが編集している以上、人工的な産物である。