経済政策をめぐる石破氏の発言はブレているが、腹の底は…(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

自民党総裁選で石破茂氏が勝利して以来、為替も株も振れ幅が大きくなっている。日経平均株価の急落は「石破ショック」と言われ、石破氏もマーケットに配慮する発言をするようになった。利上げに慎重な発言を受けて、3日のドル円相場は円安方向に大きく動いた。だが、そもそも石破氏はアベノミクスに否定的で財政規律を重視する立場。解散総選挙後までは具体的な経済政策が見通しにくい。石破氏の腹の底はいかに?

(中野晴啓:なかのアセットマネジメント社長)

 自民党総裁選で石破茂氏が勝利して以来、日本株は荒っぽい値動きが続いています。高市早苗氏の勝利を織り込んで円安、株高に急速に振れた後、石破氏勝利が伝わると一気に巻き戻しました。週明けの30日、日経平均株価の終値は前週末比1910円安となり、その後も大きく上がったり下がったり…。為替も3日、利上げに慎重な発言を受けて円は急落しました。

「マーケットのおもしろさ」と言っては相場の急落で火傷をした方には不謹慎かもしれませんが、「こうだ」と思い込んだら早い者勝ちで動くマーケットの瞬発力、本質を目撃していると言えるでしょう。

日経平均株価の振れ幅が大きくなっている(図:共同通信社)
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 財政規律を重視する姿勢を見せてきた石破氏が首相になったことで、マーケットには円高・株安になるという見方があります。確かに、短期的にはその傾向が強まる可能性があります。しかし、私は日本の産業界、そして日本経済が力を取り戻すには必要な過程だと考えています。

 総裁選では「高市ラリー」が起きましたが、ある意味、それは当然です。高市氏は、いわば究極のMMT(Modern Monetary Theory=現代貨幣理論)論者。積極的な財政出動をよしとし、金融政策は緩和路線で利上げなんてとんでもない、という立場。目先の株価が上がるならなんでもしてほしいというマーケットには、市場にマネーをジャブジャブ供給してくれそうだった高市氏が政権を取れば超追い風になるはず、という思惑がありました。

 他方、石破氏は高市氏とは真逆の財政規律を重視する立場ですが、基本的には岸田路線を踏襲すると見られています。高市ラリーが不発に終わった相場の巻き戻しを、世間は「石破ショック」と批判しました。私から見れば、高市ラリー前の状況に戻っただけで、石破氏のせいではありません。

 ただ、石破氏がこの先、財政規律を重視する姿勢を前面に打ち出せば、円高・株安に振れる可能性はあります。「石破ショック」批判を受けて総裁選後はマーケットに配慮した発言をしていますが、腹の底では増税を含む財政規律重視のフィロソフィーは揺るがないでしょう。そう考えると、今年前半までのように日経平均株価が急速に右肩上がりで上昇するような相場は期待できないのは事実です。

 しかも、10月9日には衆議院を解散し、27日は衆院選投開票という日程です。衆院選が終わるまでは、石破氏の経済政策ははっきりしないでしょう。それまではさまざまな思惑によって、相場は荒れ模様になると思います。