アベノミクスを反省し経済を「ノーマル」な状態に

 アベノミクスは、金融資産や不動産を多く抱える富裕層と高齢者にはメリットをもたらしましたが、多くの一般大衆にはほぼ無縁でした。金利をゼロに抑えたことは、日本の産業を強くすることにつながったのでしょうか。これも答えはノーでしょう。

 インフレに見合った金利のある世界に戻していく、つまり経済をノーマルな状態に戻していくことが、国民の生活に一番寄与することだと思います。金利のある世界で企業、そして産業の新陳代謝を促し、やがては円高・株高という国民にとって最も望ましい状況に進んでいってほしいと思います。

 石破氏は2日、マーケットに配慮して追加利上げに慎重な発言もしていますが、日銀には緩和的でも制約的でもない中立の金利として、1%までは段階的に利上げしていく考えがあると見ています。石破氏には、日銀の独立性を重視するという基本姿勢を大切にしてほしいです。

 マーケットは目先のことしか気にしませんが、中・長期の視点で日本経済のあるべき姿を考えるなら、石破氏の方向性は正しいと思うのです。大切なのは、誤解に基づいて「石破ショック」などと呼ばれることがないよう、マーケット、そして国民にわかりやすく日本経済を活性化するストーリーを説明することです。

「石破氏にとっての最大野党はマーケットだ」といった指摘もありますが、中・長期の視点に立ってマーケットを味方につける、骨のある石破氏らしい経済政策に期待したいですね。


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中野 晴啓(なかの・はるひろ) なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年、明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任し、 2023年6月に退任。9月1日、なかのアセットマネジメント設立。全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。近著に『新NISAはこの9本から選びなさい』『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(写真:村田和聡)