金融所得課税の強化が「資産運用立国」に必要な理由

 石破氏が主張し注目を集めているテーマの1つに、金融所得課税の強化があります。金融所得課税の強化は特に投資家から警戒されています。しかし、私はこの金融取得課税の強化について、基本的には賛成です。

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 前回も簡単に触れましたが、金融所得課税の強化は、新NISAで非課税枠を拡大した時から議論の俎上に上っていたテーマだと見ています。いずれ非課税枠の外での投資、つまり金融所得課税の対象となる投資については課税を強化する、というシナリオがあったからこそ、新NISAで非課税枠を拡大できたのだと思います。

9月30日、「石破ショック」で日経平均株価は一時2000円超下落した(写真:共同通信社)

 そして、金融所得課税を強化する際には、非課税枠をさらに拡大することで、個人投資家からの理解を得る、という方針を打ち出すのではないでしょうか。政府も金融庁も、「資産運用立国」を目指すという方向性は、石破首相になっても変わらないはず。その際、最も大切なことは、一般大衆に資産運用の行動文化を定着させることです。

 資産効果の影響を大きく受けるのは、実は富裕層ではなく、普段は切り詰めた生活をしている一般大衆です。常に資金的余裕がある富裕層は、運用益が出たからといってすぐに消費を拡大するわけではないでしょう。他方、普段つつましい生活をしている一般大衆は、資産効果で資金的余裕が出たら、財布の紐を緩めて我慢してきた消費に一気にお金を回す傾向があります。

 このような投資・消費行動を定着させることで、日本も米国と同じように、個人消費が経済をしっかりと支える構造に転換していく。それが、資産運用立国の究極のゴールです。

 それは、アベノミクスの失敗を認め、明確に軌道修正することでもあります。