世界経済に大きな影響力を及ぼす原油の価格は、2025年にどう動くのだろうか。これまで世界の原油需要を牽引してきた中国の需要のピークアウトが近づいている。他方、中東情勢は依然として供給サイドの最大のリスクだ。親イラン武装組織フーシ派の攻撃でサウジアラビア産原油の輸出が影響を受ける懸念が再浮上している。「トランプ関税」に振り回される可能性もあり、先行きの不透明感が強まっている。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は2024年12月31日、1バレル=71.72ドルで取引を終えた。昨年の最終営業日の価格と比べほぼ横ばいだった。
1年を振り返れば、中東地域の地政学リスクから4月に1バレル=90ドル台の高値を付けた後、中国の原油需要の伸び悩みが意識されて下落し、年末は70ドル前後で推移した。
まず、年末の世界の原油市場の需給に関する動きを確認しておきたい。
中国政府が発表した12月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.1だった。3カ月連続で好不調の境目である50を上回り、「中国で原油需要が伸び悩む」との懸念が後退した。中国政府が過去最大となる3兆元(約63兆円)規模の特別国債を発行し、景気を刺激する計画があるとの情報も「買い」材料となっている。
だが、中国の原油需要の早期ピーク説はコンセンサスとなりつつある。
12月に入り、中国の国有石油最大手の中国石油天然気集団(CNPC)は「中国の原油需要は来年ピークを迎える」との予測を示し、国有石油大手の中国石油化工集団(シノペック)も「中国の原油需要は2027年にピークに達する」との見通しを示した。
電気自動車(EV)などの導入拡大に加え、米国との対立激化に備えて中国政府が輸入に約7割を依存している原油の消費を減らそうとしていることも影響している。
中国の2024年1~11月の原油輸入量は前年比1.8%の減であり、通年ベースでも前年を下回ることが確実視されている。前年割れは2021年と22年の新型コロナのパンデミック期を除けば20年以上ぶりのことだ。
中国の需要不振に最も痛手を被ったのは米国だ。