「ルール守れる」どの口でいうのか…政治改革の議論深まらず

 今のところ、どのように自民党が改善され、再発防止策が施されたのかということについて、説得力のある議論がなされているという気はしない。30年前の政治改革で誓ったはずの脱派閥、脱金権政治、それらを蔑ろにしてきた。それが露呈したのがこの間の政治とカネの問題であり、旧統一協会を巡る問題だったはずだ。

 どの口でいうのか。厚顔無恥のそしりは免れえまい。

 自民党が自ら定めてきた党則も、ガバナンスコードも、何より平成の幕開けとともに相当な熱量とコストをかけて作られたはずの「政治改革大綱」も軒並み画餅か、当座をやり過ごすための言い逃れのようにすら見えてくる。

 これまで守れなかったのに、なぜこれからルールを遵守するようになったと信頼できるのか。その仕組みを誰か提案しないのだろうか。

 不思議なことに、1985年の両院での設置以来、特に参議院では初めて開催され、いっときは報道でも見かけない日がなかったともいえる政治倫理審査会は疑惑解明の場としてまったくといってよいほどに機能しなかったことがすっかり忘れられている。衆参あわせて73人(うち衆院44人、参院29人)もの議員が欠席し、発言しなかった。

 政倫審は立法府に設置されているので、その改革はある意味では法改正以上に難しい。立法府の自立と自律が厳しく保障されているため、当事者たるそれぞれの議会の議員の意志なくして改革も改正もできないからだ。

 しかし9候補者の誰かが政倫審改革を強く主張しただろうか。それどころか現状放置を望んでいるようにさえ思えるほどに、言及していない。全会一致による審査の議決が無視されたということは、立法府、そして国民の意志と権威がないがしろにされたことにほかならないのである。そのことがあまりに軽視されているのではないか。

 疑惑がかかった堀井学衆院議員は別件の公選法違反等とあわせて自民党を離党したのち議員辞職してしまった(その後、罰金と3年の公民権停止が確定)。議会での説明、解明の機会はほぼ失われたといえる。

 すでに投開票当日だが、緊張感が微塵も見えないか、内輪の「自民党の論理」ばかりが目に付く総裁選だったのではないか。

 自民党総裁選は9月12日が告示で、党員締め切りが26日。議員投票とこれらの開票作業が27日なので、2週間あまりが選挙運動期間ということになる。これまでの総裁選と比べて、公式には「カネのかからない選挙戦」を目指したといわれている。

 実際のところは外から眺めているだけでは違いがよくわからないが、変わったのは総裁選候補者らのキャンペーンのあり方だ。派閥の締め付けが弱まったことから、同一派閥や閣内からも複数人の候補者が出るなどもした。かくして「ルールを守れない人にルールを守る政治はできない」などの非予定調和と思しき発言こそ増えたが、政治改革はおろか政策論争全般が深まった感じはしなかった。