「体重計に乗るのは面倒くさい」「現実を直視したくない」というところから、体重表示のないスマートバスマットが生まれた(写真:kimtoru/イメージマート)
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 1200万ダウンロードという実績で社会現象となった「スイカゲーム」、そして25万台を売り上げた世界初の照明一体型プロジェクター「popIn Aladdin(ポップインアラジン)」。その生みの親である起業家・程涛氏は、革新的なアイデアで次々とヒット商品を世に送り出してきた人物として知られている。

 もっとも、実際には資金も人脈もない状態で起業し、最初の2年間は売り上げゼロという苦境を経験している。そこからどのようにV字回復を果たしたのか。程氏の著書『道具としてのアイデア』を紐解いてみよう。4回目は、発想力を磨く5つのステップの後半について。

※この記事は『道具としてのアイデア』(日経BP)より一部抜粋・編集しました。

アイデアを具現化する3回の「なぜ」

■ステップ②:深掘りで具現化のヒントを発掘する

「N1ニーズ」が見つかったら、次はそれを様々な切り口で深掘りしていきます。ここでは「なぜ」を3回繰り返すことが有効です。例えば、「スマートバスマット」のときは、このようにして「なぜ」を活用しました。

 30代半ば、私の健康診断の結果はどんどん悪くなっていました。このままではいけないとダイエットし、体重が減ると血液検査の結果も改善しました。ここで満足した私は体重計に乗らなくなり、リバウンド。ダイエット前よりもふっくらした体型になってしまいました。

 そこで、「N1ニーズ」の深掘りです。「なぜ」を3回繰り返すことで、 「こうなったらいいな」というアイデアを具現化するヒントを探りました。

なぜ1:なぜ、私は体重計に乗らなくなったのか?
 →「面倒くさいから」「体重増加の現実から逃避したいから」
なぜ2:なぜ面倒くさいのか?
 →「体重計の置き場所が生活動線から外れているから」
なぜ3:なぜ現実逃避したくなるのか?
 →「数字を見ることで、その瞬間の気持ちが左右されるから」

 この深掘りで、体重計が抱える本質的な課題、「面倒くさい」「現実を直視したくない」が見えてきました。そこで、機能面を充実させるよりも、「自然と乗ってしまう置き場所」と「ストレスを感じない数字の表示方法」を見直すことが重要だと気づきました。

 こうした深掘りを進めるとき、心がけておきたい視点があります。それは、まだ誰も見たことがないものを創り出そうとするのではなく、「誰もが知っているものを組み合わせ、ニーズを満たしていく」こと。発想力とは、異なる物事同士の関連性をうまく見つけ出し、新しい組み合わせを創り出す作業なのです。