体重表示のないスマートバスマットはなぜ生まれた?
■ステップ④:第一歩を踏み出し、具現化を始める
納得できる発想があり、具現化のプランが見えてきたら、迷わず行動を開始します。このステップで重要なのは、完璧を求めずに「とりあえずやってみること」 。
例えば、「スマートバスマット」 の発想を具現化していくために最初に取りかかったことは、 「30個の体重計を購入」でした。体重計の「置き場所」と「数字の表示方法」を検証するためです。
その後、体重計に乗るのが面倒くさくならない置き場所を探しました。
私は家族起点でプロダクトを発想していくので、最初に協力してくれるのも家族です。中でも妻はいつも最初のユーザーになって、忖度のない意見をくれます。
体重計を玄関、ベッドサイド、廊下、リビング、キッチン、洗面所など、様々な場所に置きました。でも、どこもしっくりきません。生活動線の上にあるものの、自然に乗ろうという感覚にならないのです。
妻からは「玄関やリビングにあると邪魔」「子どもがつまずく」「服を着ているから正確な体重が測れない」など、もっともなダメ出しがありました。そこで気づいたのが、「裸で必ず通る場所」というコンセプトでした。
そこで、浴室の脱衣所に体重計を置き、どの位置なら毎日無理なく使うかを試しました。入浴前後は裸ですから、正確な体重を計測できます。すると、おもしろいことがわかりました。バスマット近くのスペースに置いた体重計には案外乗らない。私も妻も、バスマットから1歩でも横にずれようとしないのです。
この面倒くさがりな「N1ニーズ」は、きっと多くの人の本音とつながっていると思いました。背景には「日々の体重の増減を知って一喜一憂したくない」という心理もあるはずです。
だとしたら、「思い切って体重表示を止めてしまったらいいのではないか?」そう思い、モニター部分をマスキングテープで覆ってみたら、体重計に乗る心理的な抵抗感が薄れました。
こうして、入浴前後に必ず踏むバスマットと体重計を1つにし、体重表示はしないという「スマートバスマット」の完成形に近づいていったのです。
これが本物のスマートバスマット