スイカゲームやpopIn Aladdinのヒットを生み出した起業家の程涛氏
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 1200万ダウンロードという実績で社会現象となった「スイカゲーム」、そして25万台を売り上げた世界初の照明一体型プロジェクター「popIn Aladdin(ポップインアラジン)」。その生みの親である起業家・程涛氏は、革新的なアイデアで次々とヒット商品を世に送り出してきた人物として知られている。

 もっとも、実際には資金も人脈もない状態で起業し、最初の2年間は売り上げゼロという苦境を経験している。そこからどのようにV字回復を果たしたのか。程氏の著書『道具としてのアイデア』を紐解いてみよう。2回目は、実現力を上げる5つのステップの後半について。

※この記事は『道具としてのアイデア』(日経BP)より一部抜粋・編集しました。

WHATはWHYとHOWを固めた後

■ステップ②:自分に、周囲に、差別化の価値をわかりやすく表現する

 差別化の方法が定まったら、次に重要なのが「わかりやすく表現すること」です。ゴールデン・サークルで言えば、ここまでで、次の2つが完了しています。

WHY:なぜ自分が、自分たちがこれをやるのか、誰のためにやりたいのか
HOW:十分に差別化できるポイント

 ここからは、いよいよ「WHAT」です。「どういう方法で動き出すか」という、「行動」の段階に入ったイメージです。

 どんなに優れた違いがあっても、それが伝わらなければ意味がありません。どの組織にも一定数いる、できない理由を探し、邪魔する人たちは変化を嫌います。現状のままでいいと思う人の心を揺さぶるには、違いを「価値」として、はっきり示すことです。

 popIn Discoveryの独自性は、先述した通り、次の2つです。

1.読者が記事に興味を持ったかどうかがわかる仕組み(=読了率がわかる仕組み)
2.読者の興味に応じた、ユーザー目線の最適なレコメンド(=レコメンド機能)

 ただ、差別化ポイントを単に伝えるだけでは、「価値あるもの」として受け取ってもらえません。例えば、この2つの伝え方で、どちらに価値を感じるでしょうか?

「このドライヤーの風量は、業界トップクラスです」
「このドライヤーを使えば、これまでの半分の時間で髪が乾きます」

 このように、見た人、聞いた人が価値を自分事として理解し、応援したくなるように「差別化」を商談やプレゼンの場で表現する必要があります。

 popIn Discoveryのときには、次のようにして、「価値」を伝える工夫をしました。

【伝えるべきこと】
誰に:クライアント候補のオンラインメディアの担当者
何を:読了率がわかる仕組みとレコメンド機能の価値

【課題】
「読了率」という概念をその場で理解してもらうには、口頭説明だけでは不十分

【価値を伝える工夫】
可視化ツールと実際のデモサイトを準備し、担当者に体験してもらえるようにした

 デモサイトでは、ユーザーが記事をどの程度きちんと読み進めているのかがグラフでわかるようにしました。さらに、その読了率に基づいて関連記事や広告がレコメンドされる仕組みを実際に操作してもらいました。担当者は普段扱っているメディアのコンテンツをそのまま使って体験できるため、説明不要で直感的に理解できます。

 このように、可視化とデモを通じて「読了率の概念」を実感してもらうことで、他社サービスにはない独自の差別化ポイントをしっかり伝えることができました。