写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

「頑張っているのに手ごたえがない」という手探りの経営から脱し、偶然ではなく「狙って勝ち続ける」ための手法。それが、データサイエンスを土台にした「マーケティングサイエンス」だ。『狙って売上を伸ばすデータ分析の思考法』(平尾喜昭著/クロスメディア・パブリッシング)から一部を抜粋。成功を再現させるための科学的なアプローチの本質に迫る。

 ネスレ日本を超高収益企業に育てた元代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏は、なぜ「キットカット」や「ネスカフェアンバサダー」を国民的ヒットに導けたのか。高岡氏との対話から、データを武器に変えるための秘訣を探る。

「目的」があるから顧客の問題を捉えられる

狙って売上を伸ばすデータ分析の思考法』(クロスメディア・パブリッシング)

平尾 「顧客の問題解決」を起点としたマーケティングについて、ネスレでのご経験などの中から、具体的な事例を教えていただけますか?

高岡 ひとつの例が、「キットカット」の受験キャンペーンです。「キットカット」が九州の方言の「きっと勝つとぉ(きっと勝つよ!)」に似ているところから生まれたものですね。

 まず、お菓子は限られたブランドが全体の半分のシェアを占めるようなマーケットじゃありません。だから、商品の味をよくしただけで売上が大きく上がるわけでもない。じゃあ何を打ち出せばいいのかと考えると、キットカットには世界的なスローガン“Have a break, have a KITKAT”があります。けれど、キットカットはイギリスで生まれたブランドで、イギリス人特有のセンスオブユーモアみたいなものが背景にある。日本で広げるためには、「日本人ならではのブレイク」を探さなきゃいけないと思ったんです。

平尾 なるほど、それを目的に置こうと考えたわけですね。

高岡 そう。それでいろいろやった中で効果があったのが、1000人ぐらいのユーザーから“Have a break, have a KITKAT”のイメージを写真で送ってもらうことでした。写真を大きなテーブルに広げ、みんなでディスカッションするところからのスタートです。