山本 勝った石破さんの方は、リベラル感もあるし、カネにクリーンなイメージがある。

米重 令和の三木武夫っぽい雰囲気があります。党内基盤が弱いところも似ている。

山本 野党にしてみれば、石破さんは「やりづらい相手」でしょう。

演説で何度も手元の原稿を見る進次郎

米重 一方、総裁選序盤では本命視されていた小泉進次郎さんは最終的に決選投票に残れず敗れました。世論調査で小泉支持者が多い、刷新感や世代交代の象徴というアイコンになっているのが強みでしたが、小泉さんが掲げた政策が、世論にはともかく、地方の自民党員にリーチするものではありませんでした。

 党員票にもっともネガティブに働いたのは、やはり選択的夫婦別姓の導入です。高市さんとは逆の方向ですが、いろいろな世論調査を見ると、自民党支持層の中でもコアな支持層、党員に近い政治的志向の人たちは選択的夫婦別姓にネガティブなんです。これは自民党という政党の特質が影響している。家庭と個人、どちらが優先かと問われれば、やはり家庭と考える。国家と国民、どちらが優先かと問われたら、国家を優先させるような考え方が多くの自民党員の根底にあります。

小泉進次郎氏(写真:鶴来雅宏/アフロ)
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 選択的夫婦別姓の導入は、世論全般で見れば多くの理解を得られていたとしても、党員とか自民党のコアな支持層には響かない。小泉さんが選択的夫婦別姓に賛成の立場を明確にしたことで、それまで「次の総裁は小泉さんがいいな」というようにふわっと小泉さんを支持していた人たちの中から脱落していった人たちが結構出たように思います。

 小泉さんのブレーンは、若手の政治家や経営者たち。少し乱暴に言えば、同質的な人々が集まって、やれ解雇規制の見直しだとか、やれ選択的夫婦別姓とかという政策作りをしたのでしょう。それらはひとつひとつを見れば確かに世論のマジョリティを捉えてはいるけれど、ただ無党派層から自民党支持層に作用し、自民党支持層から党員に作用するという総裁選に必要な戦略にはまる政策やメッセージではなかった。そこに気づかずに、小泉進次郎という若い“お世継ぎ”に対し、自分たちが仕掛けたいこと、やってもらいたいことを言わせる形になっていたように感じます。