岸田首相は「麻生潰し」を狙ったのか

米重 総裁選では「勝ち馬に乗る」ということの重要性もよく指摘されますが、麻生さんはだれが勝ち馬になるかの読みを外してしまった。

山本 それと、根底には岸田首相の「麻生氏とは決別するしかない」という決断があったように思います。というのも、派閥を否定した岸田首相が退陣を決めて始まった総裁選に、麻生さんは派閥の力で襲い掛かったわけですからね。唯一派閥を率いて高市さんに全振りしてきた麻生さんに対して、矛盾しているようですが、岸田さんは旧岸田派の議員に結束を呼びかけ、石破さん支持に動いた。そこに小泉さんを推していた菅さんも乗った。

自民党総裁選で勝利した石破茂氏の挨拶を、総裁の岸田文雄首相、森山裕総務会長らとともに聞く麻生太郎副総裁(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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 政局的にはどうしても3人の首相経験者が動かしている票数は大きい。岸田+菅に対し麻生さんひとりでは力が足りなかった。岸田首相が本気で「麻生潰し」を考えて石破勝利のシナリオを作ったのだとしたら、すごい策士ですね。

米重 本当にそうなら、芸術的と言えるくらいの策です。

山本 いずれにしても、麻生さんかなり厳しい状況になるでしょうね。年齢を考えても。

米重 麻生さんのほかに、今回の総裁選で大きなダメージを負った人といえば……。

山本 あとは茂木さん、河野さんらも厳しい結果が出ました。茂木さんは現職幹事長ですが党員票が13しか取れなかった。これはなかなかショッキングな数字です。

 それから河野さんは、推薦人のほとんどが麻生派で占められているのに、麻生さんは「一回目から高市に」と派内に指示を出した。これではメンツも立たない。