安倍政権が長期政権化する中、自民党内では「安倍一強」がますます鮮明になっている。その中にあって、安倍首相に批判的な発言を続ける唯一の存在が石破茂元幹事長だ。安倍批判は、世論に向けて存在感をアピールする効果もあるが、党内での孤立化を招くリスクもある。どんな思いが石破氏の舌鋒を先鋭化させているのか。その胸の内を聞いた。(聞き手:JBpress 阿部崇、撮影:西﨑進也)
石破派だけを排除
――安倍晋三首相が、公邸に石破派以外の派閥幹部を呼んで会食したりするなど、石破派を排除するような動きが見られます。これをどう受け止めていますか。
構いませんよ。うち以外の派閥を呼んで、お祝いの会をするのは。
ただ、総裁選から5カ月も経ってからなぜやるのかが分からないし、そのお祝いの会の存在について箝口令を敷いたり、公邸の裏口から出入りさせたり、翌日の新聞の動静欄に載せなかったりしたのであれば不思議だな、と思うだけです。もっと堂々とやればいいのになと。
――石破派排除の意図はどんなところにあると?
それは私には分かりません。うち以外の派閥を集めてお祝いをしようと言い出したのが誰なのかも分かりません。ですから推測で何かを言うべきではないでしょう。
――総裁選の際の演説はもちろんだが、自民党内では唯一、石破さんだけが安倍批判を続けている。「安倍一強」と言われている中で、批判を続ける信念はどういうものか。
特に安倍批判をしているつもりはありません。ただ、自民党は国民政党なんです。国会議員だけの党じゃない。党員がいて、地方組織があって、それで成り立っている政党なんです。
国民政党であるからには、党内に様々な意見があるのが当然です。憲法改正、経済政策、財政政策、金融政策、社会保障政策、安全保障政策、それぞれにいろいろな意見がある。
その多様な意見をいろいろなところで伺って、自分の中で咀嚼・消化し、議論をするために国会議員は存在しているのです。だから私は、国会議員の当たり前の仕事、自民党所属議員として当然のことをしているだけです。
――だが、今の自民党は批判を受け止める度量がないように見える。公邸での会合の一件もそうだし、安倍首相は国会でも野党からの批判に、敵意むき出しで応戦している。さらに菅官房長官も、記者会見で特定の記者がする質問を排除しようとしている。これほど批判を受け止められない政権はちょっと思い浮かばない。安倍政権になって政治家の質が変わったのか。
私は今まで長く国会に議席をいただいて、中曽根総理から現在の安倍総理に至るまでの総理総裁を見てきましたが、その中でも現在の安倍総理のアプローチはかなり異質ではあると思います。
ただそれは、安倍先生が総理になって突如としてそうなったのではありません。安倍先生は小泉純一郎内閣で官房副長官だった当時、山口新聞のインタビューで『野党に親切である必要は全くない。ケンカ腰でやるくらいの方が国民に対して誠実だ』と答えられています。つまり、安倍総理はもともとそういうスタイルであり、それを総理になってからもずっと踏襲されているのだと思います。