代議士とは「代わりに議論するサムライ」
――今の自民党は、さきほどの「国民政党」というイメージはかなり薄れているように見えます。
少なくとも私が思い描いている自民党とは違っているように思いますし、日本国中あちこちに行って会う自民党員の方からも、「こんな自民党じゃなかったよね」という意見を多くいただきます。
代議士は、「代わりに議論する士(サムライ)」です。国民の中のいろいろな意見を吸い上げ、自分なりに咀嚼し、自分の考え方として昇華させ、議論する。それが仕事です。
自民党は本来、そういう代議士の集まりだったと思います。
私は小泉内閣で防衛庁長官に登用された時から自分の政治家人生が変わったなと思っているんです。というのも、私と小泉先生は過去、徹底的に対立したことがありました。
私は政治改革において、「小選挙区制を断固導入すべし」との立場でした。小泉先生は反対派の急先鋒で、「小選挙区制になったら、政治家が党本部や官邸の言うことしか聞かなくなるから絶対にダメだ」と言っておられた。私は「そんなことはない。党と対立しようが官邸と対立しようが、述べることは述べる議員でなければ国会議員ではない」と反論したものです。今から思えば、小泉先生がおっしゃっていたことのほうが正しかったのかなっていう気もしないでもないですが、ともかく当時、小選挙区制導入の是非を巡って徹底的に対立しました。
そして小泉先生が、橋本龍太郎元総理と総裁の椅子を争った2001年の総裁選の時、私は当時、橋本派の所属議員として、めいっぱい橋本先生の応援をしていました。「小泉旋風」が吹き荒れる中、47都道府県のうち橋本先生が勝ったのは、ご自身の地元の岡山、橋本先生が大臣をなさっていた沖縄、野中広務先生の京都、青木幹雄先生の島根、それ以外では、私の鳥取だけでした。それくらい徹底的に橋本先生の応援をしたんです。
だから小泉政権が出来た時には「小泉政権が続く限りはポストなしだ」と思っていたのに、政権発足から1年後、突如として防衛庁長官に起用された。国会議員をやってきてあれほど驚いたことはありません。
小泉総理は、誰を起用するかについて、好き嫌いや、派閥の理論ではなく、小泉内閣のために誰が「使える」か、という視点で判断されたんだろうと思います。
安倍総理も、もちろん内閣の布陣は適材適所で選んでおられるでしょうし、今の日本に最もふさわしい人材を用いているのだと思いますが、それを国民に対して丁寧に説明するプロセスがもう少しあってもいいのではないかと思います。