東京新聞の望月衣塑子記者に対して、菅官房長官が「あなたに答える必要はない」といって記者会見を打ち切ったことが波紋を呼んでいる。彼女の質問が問題を起こすのは今に始まったことではなく、これまで首相官邸は記者クラブ(内閣記者会)に対して「望月記者の質問には事実誤認がある」とたびたび抗議してきた。
東京新聞はこれを突っぱねる公式見解を発表したが、肝心の記者クラブは何も対応できない。これは望月記者個人の問題にはとどまらない。記者クラブという世界に類を見ない「情報カルテル」の存在意義が問われているのだ。
望月記者に「切れた」官房長官
今回の問題は、望月記者の質問を聞かないと理解できない。彼女の直前の質問は次のようなものだ。
望月:抗議文のなかには森友疑惑での省庁間の協議録に関し、「メモあるかどうか確認して頂きたい」と述べたことに、「会見は長官に要望できる場か」と抗議が寄せられましたが、会見は政府のためでも、メディアのためでもなく、やはり国民の知る権利に答えるためにあるものと思いますが、長官はですね、今のご発言をふまえても、この会見は一体何のための場だと思ってらっしゃるんでしょうか?
官房長官:あなたに答える必要はありません
これは質問というより演説である。この途中でも司会の上村報道室長が「質問は簡潔にお願いします」とさえぎるのを無視して質問を続ける望月記者に、官房長官が「切れた」格好だ。
官房長官会見は毎日、午前と午後に行われ、通常は10分程度だが、望月記者が執拗に質問するようになってから30分を超えることも珍しくない。これに対して最初は官房長官も我慢していたが、そのうち事実誤認には官邸側が抗議を申し入れるようになった。
上の質問で彼女が「抗議文」といっているのは、昨年(2018年)12月28日に上村室長が内閣記者会に出した申し入れだ。これは望月記者の事実誤認を含む質問に対して「記者の度重なる問題行為は深刻なものと捉えており、問題意識の共有をお願いしたい」と記者クラブに要望したものだ。
しかし記者クラブは「記者の質問を制限することはできない」と答えただけで、何も対応策を取れない。新聞労連は2月になってから、国民の「知る権利」を侵害するものだという抗議声明を出し、東京新聞も2月20日に検証と見解を発表し、事実誤認を認めた。