中国・北京の人民大会堂

 年に一度の中国の国会に相当する両会(「全国政治協商会議」と「全国人民代表大会(全人代)」)が今週から始まった。全国政協は3月3日に開幕し、13日に閉幕、全人代は5日に開幕、閉幕日は15日が予定されている。

 今年の両会の雰囲気はかなり異常である。どういうふうに異常なのか。

習近平は孤立している?

 まず秋の中央委員会総会をスキップしている。

 中国の国家運営を行っているのは共産党。本来は前年(2018年)秋の共産党中央委員会総会で可決したことを春の両会で国内外メディアを通じて人民に広く知らせるというのが中国の政治システムである。ところが、一番重要な中央委員会総会がないまま全人代が開かれた。これが中国の政治にどんな影響を与えるのかまだ分からないが、不穏な空気が漂っているのは確かだ。

 ちなみに本来秋に開かれるはずだった第13期全国人民代表大会第1回会議・第3回全体会議は昨年の全人代直前の3月に開かれ、憲法改正案が可決された。改正憲法では「党の指導」と言う言葉が入れられ、国家主席任期の制限を撤廃した。それは習近平が長期個人独裁を固めるための布石といわれ、習近平独裁が始まる、といった論調の報道が国内外であふれた。

 だがその後、習近平独裁を阻むさまざまな逆風が吹く。米中貿易戦争、中国経済の急減速、習近平の個人崇拝やその他政策に対する体制内知識人たちの公然とした批判・・・。「習近平は2期目に入って、その政策方針を中央委員会で可決する中央委員会総会(四中全会)を秋に開かねばならなかったが、開けなかったのは、総会で対米政策や経済政策、個人崇拝路線に対する非難の集中砲火を浴びるのではないかと恐れたからだ」という人もいる。

 そういって中央委員会総会を避けたものの、両会を開くためには政治局会議や中央工作会議を開いて、個々の政策を打ち出さねばならない。だがニューヨークタイムズが関係筋情報として報じていたところによれば、両会直前に開かれた政治局会議で、ある人物がテーブルを叩いて、習近平の現行政策を責めたとか。第19回党大会で選ばれた政治局メンバー25人のうち13人は習近平派だ、という説もあったが、今の政治局内で習近平は孤立しているのだろうか。

小学生の喧嘩みたいな習近平サイドの対応

 またフランス国際放送(RFI)によれば、2月末に公布された「党の政治建設強化に関する意見」は、習近平が激しい党内部批判にあったため、それに対する党員および両会メンバーに対する警告の意味もある、と上海政法学院国際事務・公共管理学部副教授の陳道銀が指摘しているらしい。