シリアで拘束され解放されたジャーナリスト、安田純平氏の行動に賛否両論が渦巻いている。数々の戦場、紛争地を取材し、シリアを20年以上にわたって見続けてきた軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はどう見ているのか。誘拐が多発する地域でテロ組織に拘束されてしまった安田氏の「失敗」の原因とは?(JBpress)
充分な事前準備はできていたか?
シリアで3年4カ月にわたって拘束され、このたび解放されて帰国したジャーナリストの安田純平氏への強いバッシングが、インターネット空間および一部のテレビ番組において行われている。それは彼が、日本政府の制止を無視して危険地帯に潜入を図り、その結果、日本政府に迷惑をかけたからだ。
当時のシリアはただの危険地帯というだけではなく、外国人を標的にした営利目的誘拐が多発していた地域であり、外国人取材者にとっては非常にリスクが高かったこと、また、誘拐された場合には多額の身代金を要求されるのが確実だったことなどから、「拘束された」という事実の結果責任は免れない。それは安田氏本人も11月2日の記者会見や、その後の各メディアの取材でも明確に認め、深く反省して謝罪しているとおりだ。
では、彼の失敗は何だったのか?
まず「政府が退避勧告を出している地域に入ったことが、そもそも不適切だった」との意見がある。退避勧告は法的な命令ではないので、そこに入ったこと自体は違法行為ではない。なので、この論点は各人それぞれの「意見」である。行ったこと自体が不適切との「意見」は自由であり、否定はできない。
安田氏は明らかに「退避勧告のエリアだから行ったこと自体が誤り」との考えではないから、この「行ったこと自体が不適切」との意見の人々から見れば、行動すべてが批判対象になる。「行ったこと自体の誤りを認めて謝罪」するまで批判は続く。