IS(イスラム国)とシリア情勢をめぐるニュースで、その複雑さから、つい「カン違い」しがちなことが、いくつかある。前回(「有志連合とロシアの空爆はまったく違う」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45646)は、以下の4つの基本的事実を紹介した。
(1)フランスもアメリカもロシアも、ISを壊滅させる規模の軍事介入をしているわけではない
(2)有志連合の空爆は、ISの進撃を阻止するのに成功している
(3)有志連合の空爆が住民の犠牲を抑えるように制限されたものであるのに対して、ロシア軍の空爆は無差別攻撃であり、多くの現地住民が殺害されている
(4)ロシアはIS討伐を口実に、実際には反ISのシリア反体制派を攻撃している
今回は、その他の誤解されがちな3つの基本的事実を紹介したい
(5)諸悪の根源はISより、むしろアサド政権である
現在、欧州に殺到しているシリア難民が大きなニュースになっている。彼らがなぜ欧州を目指すのかというと、シリアにいては空爆によって生命が危険であり、さらに周辺国の難民キャンプでの生活が劣悪だからである。まさに生存のための逃避行だ。
もともと全人口が約2200万人程度のシリアで、住居を逃げ出して難民あるいは国内避難民となっている人は、約1100万人を超えている。国民のほぼ半分が流浪の民と化しているわけだが、それだけ彼らは日常的に生命の危機にさらされているということである。