OPEC(石油輸出国機構)が減産見送りを決定したことで、原油価格は当分の間、低迷することがほぼ確実となった。原油安は石油を大量に消費する先進国にとってはメリットが大きいが、物価上昇を抑制させるリスクがあるほか、新興国の経済にとっては直接的な打撃となる。
原油価格の動向は経済的な側面で報道されることが多いが、原油安の継続は、実は政治的なインパクトの方が大きい。原油安の継続によって、ロシアやベネズエラなど資源価格に依存してきた反米的な国々の財政が危険な状態に追い込まれている。また活動資金の多くを原油の密売に依存しているIS(イスラム国)にとってもそれは同じである。結果論かもしれないが、想定外の原油安の継続は、米国にとってメリットが大きい。
原油安はロシア経済を直撃
原油安でもっとも打撃を受けているのはやはりロシアだろう。ロシアは世界的に見ても有力な産油国の1つである。ロシアの原油産出量は1日当たり約1000万バレルとなっており、世界最大の産油国である米国やサウジアラビアに匹敵する産出量を誇っている。
だがロシアには目立った産業がなく、原油をはじめとしたエネルギー輸出以外に外貨を稼ぐ手段がない。ロシアは2013年に年間約5000億ドルの輸出を行っているが、その7割は石油などエネルギー関連であり、原油だけでも約2500億ドルに達する。