ソウルにあるホームプラスの店舗(筆者撮影)

 大手流通業者である「ホームプラス」が企業回生(再生)手続きに入ったことが、韓国で大きな話題になっている。

 業界勢力図の激変が引き起こした経営危機が東アジア最大の投資ファンドの創立者の「私財供出」にまで発展し、国会でも追及が始まった。

 突然の発表だった。

 韓国の大手流通業者で大手スーパーや小規模の食品スーパーなどを経営する「ホームプラス」が2025年3月4日、ソウルの回生裁判所に「企業回生手続き」を申請し、即日これが認められた。

予想外の駆け込み回生申請

 これによって金融債権の償還猶予などが決まった。

 韓国メディアによると、3月3日現在で、CP(コマーシャルペーパー)やカード債権を使った短期社債などの残高が5000億ウォン(1円=10ウォン)以上ある。

 このうち個人投資家に販売した分も2000億ウォン以上あるが、いずれも償還猶予になった。

 このほか総金融負債は2兆ウォンに達するという。

「そんなに経営が悪かったのか?」

 韓国の流通業界でも、予想外の駆け込み申請だった。会社側はこう説明した。

「2月27日、28日に信用評価会社の信用格付けがトリプルAからトリプルAマイナスに引き下げられた。こうなるとCPなどの発行が難しくなり、この先3か月ほどで資金償還に問題が生じる可能性がある。不渡りを事前に防ぐための措置だ」

「納入業者への代金決済や従業員への給与支払いには問題がない」

 この発表を機に韓国内で大騒ぎが始まった。

 ホームプラスは、売上高7兆ウォン、従業員数2万人の大企業だ。大型のディスカウントスーパーや小規模の食品スーパー「ホームプラス・エクスプレス」を全国展開する。

 商品を納入する企業や、店舗内で飲食店やクリーニング店、花店、玩具店などを運営する小規模事業者も多い。

 また、利率の比較的高い社債などを証券会社などで販売しており、「普段使う店だから安心だ」と思って買った個人投資家も少なくない。

「経営危機」となれば、影響は大きいのだ。