大統領の弾劾などを審議している韓国の憲法裁判所(筆者撮影)

 尹錫悦(ユン・ソンニョル=1960年生)大統領が職務停止に加えて逮捕、拘留され韓国の政局は混乱が続いている。その影響は経済にもじわじわと出始めている。

 非常戒厳事態から1か月。様々な分野でもう影響が出ている。

2025年経済成長率見通しを1.6~1.7%に

 2025年1月20日、韓国銀行(中央銀行)は2025年の実質GDP(国内総生産)成長率見通しをこれまでの1.9%から1.6~1.7%に下方修正すると発表した。

 韓国銀行は「12月に発生した非常戒厳事態から始まった政治の不確実性とこれに伴う経済心理の委縮の影響で今年の成長率が消費など内需を中心に0.2ポイントほど下がる」と明らかにした。

 1か月余り続く政治の混乱が、経済にもはっきりと影響を出し始めているということだ。

 筆者がいつも利用するソウルのスーパーで年明け以降、「異変」が起きている。

 夕方の買い物客が増えた。

 景気が良くて消費活動が活発になったからではない。閉店前の「割引セール」を狙ってこの時間帯に来客が集中しているという。

夕方にだけ混むスーパー

 店側も客を引き付けるためか、肉野菜などにべたべた「割引」のシールを貼り付けている。

 顔見知りの店員に「割引が増えたのではないか?」と聞いたら、「それ目当てに夕方にお客さんが来るから…でも10%くらいの値引きでは買ってくれない。もっと大幅割引をみんな待っている」と苦笑いした。

 2025年1月16日、筆者は所用でソウル中心部の飲食店街を韓国人の知人と車で通りがかった。正午前だった。

「あれれ?」

 2人そろって声を上げた。普段なら、昼食時であちこちの飲食店に列ができてるはずだ。

 ところが、この日はそれほど寒かったわけでもないのに、一帯がガラガラなのだ。

「物が売れない」「夜になると人出がなくなる」「食事に来る客が減った」

 商店主、飲食店、タクシー運転手から最近、こんな話を頻繁に聞く。

 2024年秋以降、景気が良くないなという気がしていたが、12月初めの「非常戒厳令」「大統領、首相弾劾訴追案通過」という混乱がこれに拍車をかけたのだ。

 同じ1月16日、韓国銀行は金融通貨委員会を開いた。