景気を見れば利下げが当然

 景気の冷え込みに対応した「利下げ」を予想する声もあったが、基準金利を3.0%で「据え置き」を決めた。

 韓国の基準金利は、2023年1月に3.50%に上昇した。その後、2024年10月と11月に金融通貨委員会が2回連続して0.25ポイントずつ利下げをして3.0%になっていた。

 金融通貨委員会は12月には開催しなかったため、1月に3回連続での利下げがあるかどうかに関心が集まっていた。

 この日の会見で李昌鏞(イ・チャンヨン=1960年生)韓国銀行総裁は時に苦渋の表情を浮かべて説明した。

「景気だけ見れば、金利を引き下げるのが当然の状況だった。委員全員がそう考えていた」

 金利据え置き決定後の会見で、「金利引き下げが当然」と語る異例の内容だった。

「非常戒厳令以降の政治状況が成長率にどんな影響を与えているか」

 記者からさっそくこんな質問が出た。李昌鏞総裁は、こう答えた。

「昨年12月に、2024年10~12月のGDP成長率を0.4%、2024年年間では2.2%になるとの見通しを明らかにしたばかりだ」

「しかしながらその後、1月初めまでのデータを見ると、消費、建設景気などが予想より相当に落ち込んでいる。2024年10~12月期の成長率は0.2%またはそれ以下に落ちる可能性があるとみている」

 そもそも、10~12月期の成長率見通しは、11月までは0.5%だった。わずかな期間に急速に景気が悪化しているということだ。

期待通りの成長率にならず

 韓国紙デスクが補足する。

「非常戒厳令以来、忘年会や取引先との夕食会など会社の業務に関連した会食や行事が次々とキャンセルまたは縮小になった」

「個人的にも、何となくまたにしようという話が多かった。あまりの衝撃で、消費マインドも落ち込んでしまった」

 10~12月期の成長率が大幅に落ち込むことで、2024年の年間成長率も下方修正は必至だ。

 韓国銀行は2024年の成長率について、2.2%という従来の予想を2.0~2.1%に引き下げた。

 韓国の年間経済成長率は、2021年4.6%、2022年2.7%、2023年1.4%と徐々に低下していた。半導体市況が悪化して輸出がマイナスとなったためだ。

 2024年から一気に回復するとの期待があったが、輸出が期待以上に伸びず、内需も不振で苦戦していた。

 さらに12月に非常戒厳事態が起き、何とか2%台を維持できるかどうかという水準になってしまった。

 2025年には再び1%台に戻る見通しだ。

 李昌鏞韓国銀行総裁は会見で建設景気が振るわないことにも触れた。すでに建設会社の倒産事例も出てきた。