中堅建設会社の破綻

 2025年1月6日、中堅建設会社の東亜建設がソウル回生裁判所に企業回生手続き(法定管理)を申請し、事実上経営破綻した。

 ソウルの汝矣島(ヨイド)にある「63ビル」を建設したことで知られるかつての名門建設会社だが、アパートなどの販売不振で経営危機に陥っていた。

 韓国では、ソウルの江南(カンナム)など一部地域を除くと不動産価格が下落、または下落した後横ばいの状態が続いている。

 ソウル以外の地域では、建設しても売れ残る物件が続出している。

 東亜建設の破綻直後に会った別の中堅建設会社の社長は「業界の危機感は強い」と話す。

「建設会社の経営破綻は金融機関の経営問題や雇用悪化に直結する。早め早めに金融機関と建設会社が手を打つ必要がある。政府主導で事前に対策する場合も多いが、非常戒厳事態以降、この機能が働いていない」

「東亜建設も経営破綻前に打つ手はあったはずだ。ほかにも経営が危険水準に達している建設会社は少なくない」

 巨額の借入金を抱える建設会社も少なくない。

急速なウォン安で利下げできず

 だとすれば、利下げはなおさら必要だったはずだ。

 にもかかわらず、金利据え置きを決めたのは、「もっと大きな懸念」があったからだ。

 為替動向だ。

 非常戒厳直前の2024年11月29日の為替レートは、1ドル=1396ウォンだった。12月3日を機にかなりのペースでウォン安が進んだ。

 12月31日には、1ドル=1477ウォンに達した。10年来の最安値だった。

 急ピッチなウォン安は、輸入物価の高騰を招く。それだけではない。韓国経済全体の信用度にもかかわる。

 景気後退を理由に利下げに踏み切れば、米韓間の金利差が拡大してさらなるウォン安の要因になりかねない。

 李昌鏞総裁は会見でこう話した。

「いまの為替レートは、経済のファンダメンタルズや米韓の金利差など経済的な要因で説明できる範囲をかなり超えたウォン安水準だ」

「国内の政治的な問題や米新政府の政策方向など不確実性も大きい。こういう場合は、状況を見極めてから動くことが重要だ」

 1月20日の外国為替市場では、1ドル=1448ウォンと、ウォン高に振れたがもちろん先行きは不透明だ。

 韓国内での政局の混乱がどう進むのか。米トランプ政権がどういう動きをするのか。

 現時点ではいずれも予測不能な大きな変数だ。