「以前は夢にさえ思えなかったことが目の前の現実になった」
最近の記者会見で韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル=1960年生)大統領は力強く言い切った。上半期の輸出額が日本に迫ったのだ。
ただ、輸出は好調でも体感景気はさっぱり。韓国経済が抱える構造的な課題でもある。
2024年8月29日、尹錫悦大統領は今年3度目の「国政ブリーフィング」を開いた。
執務室からテレビやインターネットでの生中継で政策について語り、その後、場所を移して記者会見に臨むという形式だった。
嬉しい知らせ、輸出で日本に迫る
就任から2周年にあたった5月、韓国南東部の浦項(ポハン)沖で大規模ガス田が発見された6月、に次いで今年3度目だった。
経済社会外交など幅広い問題について成果を強調し、年金、医療改革などこれから目指す政策について説明した。
冒頭の演説中でまず出てきたのが経済だった。
「この間、嬉しい知らせがたくさんありました」
こう切り出して、チェコで大規模原発建設事業の優先交渉対象に韓国の公企業が選定されたことを上げた。さらに続けた。
「上半期(1~6月)の輸出実績は期待を上回るものだった。前年同期比9.1%増の3350億ドルだったのだ」
「特に、日本との輸出金額の差がわずか32億ドルに縮小した。2008年に日韓の輸出金額の差は3600億ドルあった。2021年にも1000億ドルを超えていた。たったの3年間で日本に目の前まで迫った」
これが夢にさえ思えなかったこと、なのだ。
「えっ?そうなのか?」と思うかもしれない。
日本の輸出はここ数年好調だったはずだ。2023年の年間輸出金額は初めて100兆円を突破した。
2010年には67兆円だったから、かなりの伸びだった。
だが、これをドル建てでみると異なる様相となる。
日本の輸出金額は2010年の7670億ドルから2012年には8000億ドルを超えたが、これをピークに減少した。2023年は7191億ドルだった。
韓国の輸出統計は基本的にドル建てだ。2010年に4664億ドルだったが、2023年にはこれが6322億ドルに増えた。
尹錫悦大統領はこの日の演説で「1人当たりGDP(国内総生産)でも昨年、初めて日本を抜いた」と語った。
日韓の経済指標をあれこれ比較する際に、最近の円安ドル高は大きな影響を与えている。
日本を「抜いた」「迫った」はともかく、大統領が強調するように、韓国の輸出が2024年に入って絶好調であることは間違いがない。