北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記がロシア鉄道旅行を続けているのとほぼ同じ時期に、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領はすぐ近くで得意の資源外交を繰り広げていた。6日間で中央アジア3カ国を訪問し、「総額120億ドル規模の商談をまとめた」(韓国政府)という。
「首脳の仕事は仕事を取ること」。国家指導者受難の時代に、李明博大統領は、明快単純に割り切っている。
李明博大統領は、2011年8月21日から6日間にわたってモンゴル、ウズベキスタン、カザフスタンの3カ国を駆け足で訪問した。今回の外遊の狙いは「中央アジアの資源外交」だった。
資源開発分野で出遅れたモンゴルで猛烈な巻き返し
まず訪問したのがモンゴル。ウランバートルを訪問するとすぐに分かるが、ここ数年、韓国人のモンゴル進出熱はすごい。市内のあちこちにハングルの看板を掲げた料理屋があるし、ホテルのロビーでは、韓国人の団体が大声で話している。大学や教会のモンゴル進出も相次いでいる。
ところが、韓国の大企業が最も関心を見せていたモンゴルでの資源開発分野では、欧米や中国、日本に比べ韓国は出遅れていた。
「資源開発のノウハウがある日欧米企業や資金力に勝る中国企業が先行した」「モンゴル政府が北朝鮮との関係に配慮して韓国企業との資源共同開発に積極的でなかった」――などいろいろな説があるが、とにかく、今回の李明博大統領の訪問の目的は、両国の経済関係を一気に発展させることだった。
李明博大統領とツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領は、8月22日に首脳会談を開いた。この席で、両国関係をこれまでの「善隣友好協力パートナー関係」から「包括的パートナーシップ」に「格上げ」することで合意した。
ここまでは、外交の世界ではよくある話だが、李明博大統領は、こんな抽象的な合意だけでは満足しない。「数字と実績」を重視する実益主義が李明博外交の基本だ。
モンゴルでも両国首脳は「中期行動計画」の覚書にサインした。
その中身は、(1)韓国企業によるモンゴルでのインフラ・建設投資拡大、(2)モンゴル国内でのアパート10万戸建設計画への韓国企業の参画、(3)モンゴルでの鉱物資源の共同開発、(4)資源・エネルギー共同委員会の新設と定例化――など具体的だ。