尖閣諸島(写真:共同通信社)
拡大画像表示

読売新聞のスクープで日本政府がしぶしぶ認めた中国によるブイ設置

 日本と中国との間に横たわっていた「トゲ」がまた一つ、ポロリと取れた。尖閣諸島近海の日本のEEZ(排他的経済水域)内に中国側が勝手に設置していた直径10mほどのブイ(浮標物)が、ようやく中国側によって撤去されたのである。

 2月11日、中国外交部の定例記者会見の中で郭嘉昆(かく・かこん)報道官は、日本経済新聞社の記者の質問に答えて、こう述べた。

「中国は関係する海域に、気象観測用の浮標を設置しているが、これは中国の国内法と国際法に合致したものだ。最近、ある浮標がそこでの作業任務を終えた。科学的観測の実際の必要性に基づいて、中国の関係部署は自主的、技術的な調整を実施した」

 何とも持って回った言い方だが、1年7カ月にわたって日本を振り回した「小さくないブイ問題」を引き下げたことを、中国側も認めたのだった。

2023年7月に確認された中国が設置したブイの位置(写真:共同通信社)
拡大画像表示

 この一件の騒動は、2023年9月18日に、読売新聞が報じたスクープ記事から始まった。

〈尖閣諸島(沖縄県)近くの日本の排他的経済水域(EEZ)内で、中国が海洋調査ブイを新たに設置したとして、日本政府が中国側に抗議したことがわかった。(中略)

 政府関係者によると、海上保安庁の巡視船が7月11日、日中のEEZの境界にあたる日中中間線から日本側に約500メートル入った海域で黄色いブイを確認した。現場は同諸島・魚釣島から北西に約80キロの海域で、ブイには「中国海洋観測浮標QF212」と書かれていた。海底に重りを下ろして固定しているとみられる。(以下略)〉

 翌日の松野博一官房長官(当時)の定例会見で、読売新聞の記者がこの件を質すと、松野長官はあっさり認めた。