痛んだ軟弱地盤に大型重機を投入したのは正しい判断だったのか(Ulrike MaiによるPixabayからの画像)

 本稿冒頭で、まず、埼玉県八潮市の現場で「トラックの吊り上げ」を行っていた最中、陥没現場のすぐ隣に第2の穴が開いてしまった事実を確認しておきましょう。

道路陥没し転落したトラックをつり上げ直後に新たな陥没が…取り残された運転手の救助活動難航し安否不明 水道使用制限 120万人に影響 埼玉|FNNプライムオンライン

 上のリンクの動画、開始から1分ちょうどを見てください。

 2回目の陥没でできた新しい穴の至近に、力を分散する板を置いて重機の足場が組まれています。

 つまり、崖状に崩れている軟弱土壌のすぐ近くに、上から垂直に何トンかの荷重をかけたら、その真横に穴が開いた。

 当たり前の破壊が起きている。

 初歩の物理の観点から、ほとんど自殺行為に近い重機の設置と指摘せねばなりません。

 今回は、この事実の意味を考えてみます。

 前回稿「八潮市の道路陥没事故、なぜ会話ができた3時間に救出できなかったのか」が数日にわたって多くのビューをいただき、公開から4日目の本稿執筆時点でも、まだ上位にランクインしています。

 しかし、その間も八潮市の現場で救助作業は進んでいません。

 2月5日のドローン探索で下水管内100~200メートルほど下流に運転席らしきものが確認されたと報道がありました。

 捜索は2月9日、8日ぶりに再開しましたが「2次被害の恐れがある」として陥没穴での捜索を「断念」したとの報道がありました。今後はトラックのキャビンが流された下水道での捜索を続けるという。

 他方、私の前回稿と前後して、ヘリコプターからの水難救助などに長い経験を持つ元自衛官の方のサイトで、今回の「救助」の「初動ミス」「自衛隊への災害派遣要請」などが遅れたことを指摘していました。

 いくつか基本的な物理などに指摘すべき点がありますが、総じて非常に参考になりました。

 ヘリコプター派遣の有効性を指摘する記事も発出されています

 同記事によると、現場担当者は市の消防当局が「救助ヘリコプターの派遣要請は考えなかった」と述べているようです。

 本稿ではこれら報道情報も踏まえ、基礎的な物理の観点を参照しつつ、救助の遅れのみならず被害拡大の原因を考えます。

 最初に結論です。

1:現場は埼玉県道松戸草加線、中央1丁目交差点で、県道の道路管理者は「県等の土木事務所等」になります(市町村ではありません)。

2:陥没発生の直後から、県は水道供給の停止などを開始しており、今回の事態が広域にわたる災害であることは認識されていたと考えられます。

3:都道府県知事等は、人命ならびに住民の財産保護に必要と判断した場合、自衛隊に対して災害派遣を要請することができます。しかし、今回そのような判断は迅速には下されませんでした。

 今後、知事以下、埼玉県の責任が追及されることになるでしょう。

 少なくとも埼玉県知事には、道義的責任を問われる可能性があるでしょう。被災者の家族に対する発言も注目されるところです。

 都道府県の知事は住民の生命、安全を守る上で、「秒」の判断が求められる重大な職責であることを、有権者は改めて深く理解し直す必要があると指摘せねばなりません。