
(ライター、構成作家:川岸 徹)
フィンランドに生まれ、ラップランドを愛したデザイン界の巨匠タピオ・ヴィルカラ。20世紀のモダンデザインに大きな足跡を残したヴィルカラの日本初回顧展「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」が東京ステーションギャラリーで開幕した。
最果ての地、ラップランド

北欧フィンランド最北の地、ラップランド。神秘的なオーロラや白夜、雄大な北極圏の自然、季節ごとに移動しながらトナカイと暮らす先住民族サーミの人々。ラップランドは世界中の人々を魅了し、未知の体験や心の浄化を求めて訪れる観光客が後を絶たない。
フィンランドのモダンデザイン界にて、没後40年が経過した今もなお圧倒的な存在感を放つタピオ・ヴィルカラ(1915〜1985)も、ラップランドに魅せられたひとり。ヴィルカラはフィンランド南部の港町ハンコに生まれ、1930年代から広告デザイナーとして働く。1940年代後半から50年代にかけて、世界的なガラス食器メーカー「イッタラ」のデザインコンペ優勝やミラノ・トリエンナーレのグランプリ受賞などの栄光をつかみ、世界が知る存在になった。
その後、60年代にラップランドの自治体のひとつ、イナリに拠点を設け、創作活動に取り組む。ラップランドの静寂と孤独はヴィルカラの感覚を研ぎ澄ませ、彼は重要な作品を次々に生み出していった。