
1月28日に埼玉県八潮市の道路が突如陥没し、トラックが穴に落下した。その後も穴は広がり2月2日時点で直径31メートル、深さ16メートルに達した。陥没の大きな理由のひとつが、地下10メートルに敷設されていた下水道管に穴が開き、そこから土砂が落ちて道路下に空洞ができたことに起因するとされる。まるで「ポンコツ化する日本」そのものだ。水ジャーナリストの橋本淳司氏に話を聞いた。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
複数の理由が絡み合っている
──埼玉県八潮市の交差点で発生した道路陥没では、穴に転落した男性の救助活動が続いています。ここまで大規模な陥没が起きた理由はどこにあるのでしょうか。
橋本淳司氏(以下、敬称略):さまざまな要因が複雑に絡み合っていると分析すべきです。「下水道管の破損だけ」「地盤が緩い場所だっただけ」という短絡的な決めつけは危険だと考えています。
八潮市の道路が陥没した理由は主に以下3つの理由が複雑に絡み合っていると見られます。
まずは、下水道管の老朽化と腐食。1983年に敷設された下水道管はすでに42年が経過して老朽化が懸念されていました。さらに管内を流れる汚水から硫化水素が発生し、落差や段差の大きいところで酸素と反応して硫酸をつくります。この硫酸が下水道管内部のコンクリートや金属を腐食させ、破損したと考えられます。

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。
2つ目は、地質・地盤の問題。事故が起きた八潮市の道路は中川低地と呼ばれる軟弱な地盤の上にあります。実際、下水道管が埋設されている場所の50m程度まで砂やシルト層で構成されていて、いつ液状化が発生してもおかしくない状態でした。
3つ目に、交通荷重。陥没が起きた場所は八潮市役所から300mほど離れた場所にあり、非常に交通量の多い交差点です。大型車両や重機の通過が多い場所では地中への影響も大きいものです。
──救助作業が遅れている理由は?