4年前は「ただちに工事は必要ではない」状態だったが…

橋本:事故が起きた道路には地下埋設物が多かったことを指摘するべきです。下水道管は、雨水と生活用水を共に処理する「合流式」と分けて流す「分流式」があり、八潮市のケースは分流式を採用していました。破損した下水道管の上には雨水管や水道管があり、道路陥没が起きれば「どの管がいつ破損するか」分からない状態です。当然ですが、下水道管以外の管が破損すると、土砂が流れ込んでくることから、救助には慎重にならざるを得ません。

──2015年に下水道法が改正され、腐食の大きい道路について全国の下水道事業者に5年に1回の点検を義務づけています。当該道路は同法が義務づける点検の対象外でしたが、埼玉県が2021年に独自に調査しています(県管轄の根幹的管路だったため)。結果は「ただちに工事が必要な状況ではない」という判断でした。

橋本:埼玉県の独自調査において、当該道路の優先度は「Bランク」(A〜Cのうち)でしたが、優先度の基準のあり方は今後議論の対象となっていくでしょう。

(図:共同通信社)
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 例えば、地質の影響、あるいは地下埋蔵物の影響を考慮していたのか、近年の気候変動による気温上昇を受けた管の劣化も考慮に入れていたのかという議論が今後必要になってくるでしょう。

 さらに近年ではAIやドローン、センサーを使った最新の点検もはじまりつつあります。ただ、全国の事業者の下水道管の点検・工事に関しては根本的な問題が存在します。それは現場の『ヒトとカネ』が圧倒的に不足していることです。

──どういうことでしょうか。