
1月28日に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故は過去に類を見ない大規模なものとなった。陥没の大きな理由は地下10メートルに敷設されていた下水道管に穴が開き、そこから土砂が落ちて道路下に空洞ができたことにある。土木計画が専門の神戸大・小池淳司教授は「点検の際、下水道管が埋設されている『深さ』を十分に考慮していたのかが疑問」と指摘する。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
大阪市でも年間150〜300件起きている道路陥没
──埼玉県八潮市の道路陥没事故は救助活動が難航し、道路の崩落も相次ぐなど過去に類を見ないものになっています。土木計画が専門の小池さんはこの事故をどのように分析していますか。
小池淳司・神戸大学大学院工学研究科教授(以下、敬称略):下水道管の破損に起因する道路陥没は珍しいものではありません。私の研究室で持っている大阪市のデータにおいても、年間150〜300件ほど発生しています。ただ、そのほとんどが「道路に小さな穴が開く」という程度のもので、被害はそれほど大きくありません。
八潮市のケースが特異なのは、下水道管が埋設されている「深さ」です。破損した下水道管は地下10メートルにあり、通常より深く、破損時に崩れる土砂の量もそれだけ多かったと言えるでしょう。
──2015年に下水道法が改正され、国交省は腐食の大きい道路については全国の下水道事業者に「5年に1回の点検」を義務付けています。八潮市の道路は点検の対象外でしたが、埼玉県が「県の根幹的管路」という理由で21年に独自調査しました。結果は「優先度Bランク」で「ただちに工事が必要な状況ではない」という判断でした。その判断は妥当だったと思いますか。