道路陥没事故の現場周辺=10日、埼玉県八潮市 (写真:共同通信社)

埼玉県八潮市で起きた道路陥没の主要因である下水道管の老朽化は全国的な問題だ。日本全国に約49万キロの下水道管が敷設されているが、標準耐用年数(50年)を超えている管路は約3万キロ(2022年)に及ぶ。2032年には約9万キロ、2042年には約20万キロに到達するという予測もあり、国交省は自治体に向けて点検を要請している。土木計画が専門の小池淳司教授は「国は地方に管理・点検を求めるのではなく、国が主体的になって点検するべきだ」と指摘する。なぜか。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

>>(前編から読む)【八潮・道路陥没】露見した下水道の盲点…深さと地盤改良、危ないのは高度成長期にできた都市部の住宅街や国道付近

「地方分権」とインフラ投資の相性の悪さ

──国交省は八潮市の事故を受け、東京や大阪、埼玉などの7都道府県に対して、大規模な下水処理場につながる直径2メートル以上の大規模管路の点検を求めました。また、各自治体も自主的に点検を進めています。これで陥没事故のリスクは減るでしょうか。

小池淳司・神戸大学大学院工学研究科教授(以下、敬称略):私は、自治体ごとに点検や工事を進めていくことは危険だと考えています。すでに全国で耐用年数をむかえた下水道管が多数あり、八潮市のような大規模な陥没事故も起きている以上、国が責任を持って下水道管事業を点検し、更新投資を進めていくべきです。

 というのは、「地方分権」という言葉の響きは良いのですが、インフラの強化とは相性が悪いのです。「我が県では、インフラに予算を“バラまき”するよりは教育・福祉に力を入れます」という地域があっても不思議ではないからです。そうなると、都道府県によっては脆弱なインフラが放置されたままになってしまいます。

 基本的に、国民の生命・財産にかかわることに関しては国が責任を持つべきで、インフラ投資はその典型例です。確かに日本では下水道事業は都道府県の管轄ですが、ただでさえ財政が厳しく人材も不足しているのが現実です。

 本来であれば八潮市のような道路陥没は起きてはいけないはず。国が下水道事業を管轄し、必要な予算をつけ、人材を育てることを考えるタイミングにきていると思います。

──これまで欧米などでは、インフラの維持・管理を民間企業に託す動きが潮流となってきましたが。