絶好調の半導体輸出だが・・・

 韓国産業通商資源部が9月1日に発表した「8月の輸出入動向」によると、8月の輸出額は579億ドルで前年同期比11.4%増、8月としては過去最大だった。

 輸出金額が前年同月比で増加したのは11か月連続だった。

 最大の牽引役は半導体だった。8月の輸出額は119億ドルで同38.8%増だった。AI(人工知能)用に加え、世界的なデータセンター建設ラッシュでメモリー需要が急増した。

 尹錫悦大統領は「米ブルームバーグは韓国の輸出増加はブロックバスター級だと報じたほどだ」と述べた。

 韓国は輸出立国のはずだ。

 半導体業界や輸出が好調なら、韓国経済全体も好影響を与える。確かにちょっと前までは、そうだった。

でも、景気は悪い

 ところが、いまは「景気が良くなった」という話を周辺でほとんど聞かない。

 それどころか、「景気は本当に悪い。輸出が絶好調というけれど、低迷していた半導体市況が回復して半導体が好調になっただけ」(韓国紙デスク)という冷めた声が圧倒的だ。

 大統領の「国政ブリーフィング」の翌日、韓国の統計庁は「7月の産業活動動向」を発表した。

 全産業の生産は前月比0.4%減で3か月連続でマイナスだった。小売販売も同1.9%減だった。設備投資は二桁増だったが、建設投資はマイナス。

 生産、小売り、建設が良くないことで、景気の現状を示す動向指数は5か月連続マイナスだった。

 生産活動に関しては、半導体など一部分野は好調だが、広がりに欠ける。内需は、ずっと弱いままだ。

 地方都市でアパートの売れ残りや予約不振で建設計画の取り消しなどが相次ぐなど、建設景気は良くない。

 絶好調の輸出とは全く違う姿があちこちで見られる。閣僚経験がある大学教授はこう話す。

「最近になってようやく消費者物価上昇率が2%台に収まってきたが、物価上昇が止まらなかった。賃上げ抑制が続き、可処分所得は増えず、格差も縮小しない」

「物価高が続いていたために、政策金利が3.5%のままで、引き下げが遅れた。中小零細企業や個人経営の商店には高金利は打撃だ」