トランプ就任時にまた弾劾

 経済の先行きへの懸念が消えない中で1月20日にトランプ政権が発足した。

「トランプ大統領は、『えっ!またか?』という反応なのだろうか?」

 経済閣僚出身のエコノミストはこう嘆く。

「世界中の主導者、企業経営者がトランプ政権と接触しようとしている中で、韓国は大統領がまたも不在とは・・・」

「李昌鏞氏と崔相穆氏はよくやっているが、『危機管理』で手一杯だ」

 実は前回、8年前の就任時は、朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)に対する弾劾訴追案が通過し、大統領権限は停止になっていた。

 今回は現職大統領が職務停止どころか、逮捕拘束中だ。

 尹錫悦大統領は、トランプ氏の当選後に急遽、久しぶりにゴルフの練習を始めた。

 ゴルフ外交で親密な関係を築いた安倍晋三元首相にあやかろうとしたのだろうが、実現できなかった。

 結局、1月20日の大統領就任式には、韓国の駐米大使が出席することになった。

「自動車への関税、半導体産業へのインセンティブ、さらにEV普及策はどうなるのか。いずれも韓国の産業界にとって大きな問題だが、大統領不在でトランプ政権にコンタクトさえできない」(韓国紙デスク)

 米新政府への対応だけではない。

「これまでの稼ぎ頭が低迷し、経済の牽引役、次の成長の種が見えないこと」(財閥系企業社長)はもっと深刻だ。

「韓国でいま儲かっている業種、財閥はどこなのか?」

 日本の企業経営者からこういう質問をよく受けるが、答えに窮してしまう。

「銀行かな」と言うと、みんなキョトンとした顔になる。

混乱の長期化が最も心配

 韓国の大手銀行は、高金利の恩恵を受けて好業績だ。

 だが、中長期的な成長セクターとは言えない。

 これまで韓国経済を牽引してきた分野が、1つまた1つ苦境に陥っているのだ。

 特に製造業の低迷が痛い。

 石油化学と鉄鋼業界は「当分不振から抜け出せない」という見方が多い。

 もともと対中輸出でも稼いでいたが、中国は景気が低迷している。おまけに超大型生産設備を抱えた中国企業が輸出攻勢をかけており、韓国勢の競争力が一気に落ちてしまった。

 家電分野もじわじわと中国企業に追い上げられている。

 一時は、「次の成長分野」として大型投資に乗り出したEV(電気自動車)バッテリー事業は、EVの販売不振で計画の縮小が相次いでいる。

 半導体と自動車は、絶対的な切り札と言えるのか?

 半導体メモリー分野をみよう。最先端分野での開発競争でサムスン電子が苦戦している。汎用品では中国勢が急速に追い上げている。

 自動車はどうか。つい最近、中国のBYDが韓国市場に進出した。

「格安製品で攻めてくるという見方もあったが、技術力に自信を持っているのか、中価格帯以上の製品でじっくり攻めてきた。こちらの方が怖い」

 大手自動車メーカーの幹部はこう明かす。

 製造業以外の内需型の消費関連企業は軒並み苦戦している。

 それでも企業は生き残る必要がある。必死になって次の成長源を探すはずだ。

「私たちはもう慣れてきたから、政治のニュースを見ないようにすればよいが、海外で韓国の混乱ぶりの報道を見たらどれだけ驚くことか」

「為替レートや格付けに影響が出ないことをひたすら願うだけだ」

 ある大企業の副社長は、「政治の混乱が長期化することが一番心配だ」と話す。