米議会で施政方針演説をするトランプ大統領(3月4日、写真:ZUMA Press/アフロ)

「韓国、という言葉が出てきた時はビクッとした。内容を聞いて衝撃を受けた」

 韓国の元経済閣僚はこう話す。トランプ大統領の施政方針演説(韓国時間2025年3月5日)のことだ。

 産業界では「経済状況が良くないのに、韓国が標的になったら大変だ」という懸念も高まっている。

 施政方針演説があった韓国時間3月5日午後から6日にかけて、韓国の大企業経営者、経済閣僚経験者、通商交渉に長年携わった元外交官など何人かに会う機会があった。

韓国の関税率は米国の4倍だ

 驚いたことに、ほぼ全員が「施政方針演説の中継を見ていた」というのだ。かつてこれほど韓国で米大統領の施政方針演説が注目を集めたことがあっただろうか。

 中継を見ていた企業人たちは「仰天した」と声をそろえる。それは、トランプ大統領が韓国の関税を直接やり玉に挙げたことだ。

「韓国の平均関税率は米国の4倍だ」

 トランプ大統領は、韓国を名指ししてこう批判したのだ。さらにこう続けた。

「米国が軍事的に多くの手助けをしている友好国が、こんなにも高い関税を課している。米国に対して公平とは言えない」

 韓国では3月5日の夜のニュースも、6日の朝刊もほとんどがこの演説内容をトップニュースで伝えた。

 トランプ大統領は「数えきれないほどの国が米国よりはるかに高い関税を米国に課している。不公平だ」と語った。

 そのうえで、EU(欧州連合)、中国、ブラジル、インド、カナダ、メキシコとともにまたも韓国を名指ししたのだ。

 先の元経済閣僚はこう話す。

「トランプ大統領の頭の中で、EU、中国、カナダ、メキシコなどと並んで韓国が不公平な高率関税国家だという認識があることに衝撃を受けた」

「まさか、こういう国々の中で、韓国の名前が出てくるとは・・・」

 6日付大手紙の1面トップの見出しは「トランプ、韓国に対しても巨額請求書を送りつけた」(朝鮮日報)、「『韓国の関税 米国の4倍』トランプ『思い通りの請求書』」(中央日報)などで一色だった。

 この元経済閣僚は、「やはり大統領不在の影響が大きかったのか」と嘆く。

「日本のように早めに首脳会談を開き、トランプ大統領にきちんと説明できていれば、こんなことにはならなかった」との思いがあるからだ。