関税付加で大幅減益は必至

 韓国の自動車各社は、ここ数年、中国市場での販売不振を補うため対米輸出を一気に拡大させた。特に、価格の高い車種を重点的に米市場に投入し、これが収益を牽引した。

 この対米シフトがいま最大の懸念点になっている。

 SK証券が最近発表したリポートによると、米国が韓国からの自動車輸入に対して25%の関税を課す場合、現代自動車は6兆6000億ウォン(1ウォン=10円)、起亜は4兆1000億ウォンの年間営業利益減益要因になるという。

 現地生産の拡大やアラスカ産LNGの購入など韓国政府も日本と同じカードを手に米政府と交渉する。

 それ以外に、韓国の産業界で注目を集めている業種がある。

トランプ大統領が関心を持つ造船

 造船だ。

 韓国は中国と並び世界トップ水準の造船大国だ。

 トランプ大統領はかねて、「米国の造船産業の復活」に関心を示している。トランプ大統領は韓国との造船分野での協力についても言及したことがある。

 2024年11月、米大統領選当選直後に尹錫悦大統領と電話会談した際にも「韓国の世界的な軍艦、船舶の建造技術についてはよく知っている」などと話した。

 実は、トランプ大統領は民間人として1998年に韓国南部の巨済島(コジェド)にある大宇造船(いまのハンファオーシャン)の造船所を訪問したことがある。

 以前から造船産業に関心があり、わざわざ韓国の造船所を訪問したということだ。

 2月末にワシントンを訪問した安徳根(アン・ドククン=1968年生)産業通商資源相はハワード・ラトニック米商務長官と会談し、造船分野での協力などについても話し合った。

 トランプ大統領は施政方針演説でも「民間と軍用の造船産業を復活させる」と語り、ホワイトハウスに造船局を新設することを表明した。

 だが、果たしてこれが韓国側が望むようなカードになるのか。

 米韓の造船産業に詳しい大学教授は「米国の造船産業はほとんど存在感がない。人材も少なく、設備も老朽化している。トランプ大統領が望むのは米国での造船所の復活で、これを求められたら韓国側が大きな負担を強いられる大プロジェクトになってしまう」と話す。

「いったいどんな請求書が来るのか」

 トランプ大統領の施政方針演説で名指しされたことで、韓国政府も企業も懸念が強まっている。