2023年7月、都市対抗野球1回戦でJR西日本に完封勝利し、手を振るパナソニック・與座健人投手(11)=東京ドーム(写真:共同通信社)
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 社会人野球のパナソニック野球部が、2026年度シーズンを持って休部すると発表した。

 関西地区を代表する社会人野球チームであり、プロ野球にも数多くの選手を輩出している名門チームだけに、日本野球界に大きな衝撃が走っている。

 パナソニック野球部は、松下電器野球部として1950年に創部された。

 1917年に松下幸之助が大阪市に創業した松下電器器具製作所は戦前、既にラジオ、白熱電球などの家電製品のメーカーとして大を成し、戦後は復興の波に乗って急速にビジネスを拡大。1949年には東証、大証に上場を果たす。翌年、グループ会社の福利厚生、愛社精神醸成の一助とすべく野球部を立ち上げた。

 当初は軟式野球だったが、1952年に硬式に移行、翌年、早くも都市対抗野球に代表チームとして出場。以来、都市対抗野球には、日本生命(大阪市)の64回に次ぐ57回出場。優勝はないが、1960年には準優勝。社会人日本選手権大会にも日本生命の43回に次ぐ40回出場し、2000年にはエース愛敬尚史(のち近鉄、楽天)を擁して初優勝、2005年にも2回目の優勝を果たしている。

2005年11月、社会人野球日本選手権の決勝戦で、11回裏、NTT西日本にサヨナラ勝ちし、ベンチを飛び出し大喜びする松下電器ナイン=大阪ドーム(写真:共同通信社)

プロに多くの名選手を送り出した名門チーム

 パナソニック野球部は創部当初からプロ野球に多くの人材を輩出してきた。特に昭和の時代は同じ関西の阪急ブレーブスとの関係が深かった。

 1953年、都市対抗に初出場した際の主力内野手だった河野旭輝は、翌年阪急に入団し、盗塁王3回、ベストナイン1回。

 1968年のドラフトでは阪急が、松下電器の主力打者だった加藤秀司(2位)と福本豊(7位)を指名。二人は揃って2000本安打を打ち名球会入りした。当初、阪急のスカウトのお目当ては強打者加藤だったが、小柄だが俊足の外野手福本も目に留まり「ついで」に指名したという。

 1974年には、山口高志が同じく阪急からドラフト1位で指名され入団。小柄な体から繰り出すうなりを上げる剛速球で一世を風靡した。