エプスタイン文書透明化法案可決を受けて会見するマージョリー・テイラー・グリーン議員(11月18日、写真:AP/アフロ)
上下両院圧倒的多数でトランプの反対退ける
米下院は11月18日(米東部時間)、未成年者に対する性的人身売買などの容疑で拘束されていたジェフリー・エプスタイン被告(拘留中に死亡)の捜査に関連するすべての文書を司法省に公開するよう命じる法案(エプスタイン文書透明化法案=Epstein Files Transparency Act)を賛成427票(共和216票、民主211票)反対1、無投票5(共和2票、民主3票)*1で可決した。
*1= 唯一反対したのは共和党保守派MAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大に、トランプ支持派基盤組織・運動)系のクレイ・ヒギンズ下院監視・政府改革委員会「連邦法執行小委員会」委員長(ルイジアナ州選出)。プライバシー侵害を理由に、証人や家族など「無実の人々」が傷つくと主張して反対票を投じた。
(MAGA Congressman Slams “Weird” Epstein Files Petition, “It’s a Shame” )
(United States House of Representatives Committee on Oversight and Government Reform)
同法案は翌19日(米東部時間)、上院でも全会一致で承認された。
ドナルド・トランプ大統領が11月19日に署名し、エプスタイン文書透明化法案は成立した。同法案には、次の条項がある。
●「30日以内に非機密(unclassified)の文書を公開する」
●「必要であれば機密(classified)情報をできる限り非機密化(declassify)する」
さらに被害者や関係者のプライバシー保護のため、一定の修正を入れるべきという意見もあることや、トランプ氏が公開後の修正や条件付けなどで「注文」をつけてくる可能性もありそうだ。
現にトランプ氏は11月18日、「私はエプスタインとは何の関係もない。病的な変質者だと思い、(同氏が所有するフロリダ州の別荘マー・ア・ラゴの)クラブから何年も前に追い出した」「(エプスタイン事件は)極左の狂人たちが仕掛けた民主党の作り話だ」と話している。
(Congress Approves Bill to Release Epstein Files After Monthslong Fight - WSJ)
(Senate Agrees to Pass Bill to Force Epstein Files’ Release | TIME)
こうした客観情勢からアクシオス(Axios)やUSAトゥデイなどはこう指摘している。
●法案は立法化するが、エプスタイン文書の公開には依然として大きな障害がありそうだ。
(House votes to force DOJ release of Jeffrey Epstein files)
●上下両院での圧倒的多数による投票結果はエプスタイン文書公開への明確なメッセージだが、捜査中に得たエプスタイン被告に対する情報がすべて日の目を見るかは疑わしい。
●進行中の捜査や訴追を危険にさらす恐れがある文書は、公開を差し止めることができるからだ。
(Trump's 2nd term at a crossroads with Epstein saga, affordability woes)
司法省による公開とは別に、下院監視・政府改革委員会はすでにエプスタイン関係調査を進めており、多くの文書、電子メールを公開済みだ。
法案に反対したヒギンズ氏などは、「調査を通じて調べる方(召喚・聴聞)が正しい道」と主張。このため、司法省による公開と併せて、議会による調査が今後も重要になりそうだ。
(HHRG-119-GO33-20250723-SD026.pdf)
また、実際に司法省がすべてのファイルを整理・非機密化して公開するまでには時間がかかる可能性が高い。特に、膨大な数量の文書になるため、精査や分類変更のプロセスは簡単ではない。