グリーン、MAGA分派立ち上げか
エプスタイン文書透明化法案劇のスピンオフ的話も広まっている。
今回、トランプ氏に真っ向から反論して勝利した形になったグリーン氏が俄かに脚光を浴びているのだ。
グリーン氏は米南部ジョージア州で生まれ育った生粋の「南部出身の女性」だ。
米国では、南部の女性を「Steel Magnolia」(スチール・マグノリア=鋼鉄の木蓮)と評することがある。
優雅さの裏に強い精神力を持つという意味だ。
1987年にはオフブロードウェイで同タイトルの戯曲が演じられヒットした。1989年にはジュリア・ロバーツ主演で(日本上映のタイトルは「マグノリアの花たち」)で映画化された。
グリーン氏は、地元ジョージア大学で経営学学士号を取るや、父親が創業した建設会社の経営に従事、地元経済界で頭角を現した。
2020年下院選に出馬して当選、2024年には得票率で6割強を獲得し、現在3期目。
初当選からトランプ氏に忠誠を誓った根っからのMAGA系議員で、陰謀論者でもある。
(Marjorie Taylor Greene - Wikipedia)
下院議員になる前からトランピズムに陶酔し、トランプ氏を100%支持してきたのだが、トランプ第2期政権発足後は、トランプ氏が選挙公約を忘れがちな点に疑問を持ち始めた。
その一つがエプスタイン文書公開だった。
トランプ氏は、大統領選挙中には文書公開を公約したにもかかわらず、再選後は公開に難色を示してきたとして、グリーン氏は公然と批判した。
グリーン氏の指摘に業を煮やしたトランプ氏は11月に入り、次期選挙では、グリーン氏支援を撤回すると宣言。
その過程で元々MAGAのスポークスパーソン的存在だったグリーン氏は「同志」を募って支持基盤を固め、名実ともに党内実力者として躍り出た。
トランプ氏の党内統率力に陰りが出てきた今、グリーン氏の動向が注目されるゆえんだ。今後、グリーン氏が共和党内でどのような存在になるか。
ワシントン・ポスト、タイム、デイリー・ビーストなどの分析を要約すると、以下のようになる。
●グリーン氏が「反トランプ右派」の旗印になるかもしれない。透明性や腐敗追及を掲げ、トランプ氏の主流派とは別方向で動くリーダーになる可能性がある。
共和党内の分裂を広げ、トランプ氏とグリーン氏の対立が、MAGA系保守派の間でのイデオロギー対立(トランプ忠誠派 vs より「反エスタブリッシュメント」な右派)を強める。
●トランプ氏が修復路線を取るかどうか、だ。エプスタイン文書公開支持への方針転換や選挙戦略上、グリーン氏を再び重要な同志とみなして和解を図る可能性は無論残されている。
ただ、トランプ氏は グリーン氏の主張(透明性など)をある程度受け入れながらも、彼女の影響力を制限するような枠組みを構築するだろう。
●今回の衝突を機に、グリーン氏が下院議員としてではなく、より大きなポジション(州知事、上院、もしくは全国的な保守運動の顔)を目指す可能性もありうる。
トランプ氏に代わる「新たな保守リーダー」として同志を集め、独自の資金源を使って支援者を固め、「トランプ氏を超える保守派の象徴」になる道だ。
●短期的には、両者の対立はかなり深まる公算が強い。エプスタイン資料公開を巡る対立の激化、支援の取り下げ発言などから見て、完全な和解は当面難しいのではないのか。
だが完全な破局とも断定できない。グリーン氏にとっては再選が迫っている。選挙戦略次第で、戦略的に一時的な協力は十分あり得る。
(Marjorie Taylor Greene Might Be the Future of the Republican Party | TIME)
(Marjorie Taylor Greene Warns GOP of Voter Rebellion at Midterm Elections)
(MAGA rift grows as Trump feuds with Greene before key 2026 midterm elections - The Washington Post)
盤石の態勢を誇ってきた「トランプ帝国」にヒビが入り始めたようだ。
「エプスタイン文書透明化法案」対立に至る政治劇は、奇しくもその一断面を見せつけた。
