半導体補助金廃止?
韓国の産業界でもう一つ懸念の声が上がったのが、施政方針演説でトランプ大統領が、半導体企業に対して補助金を支給するCHIPS・科学法について「何千億ドルも補助しているのに何に意味もない。高関税を課せば、税金を払いたくないので企業はやって来る」と述べ、廃止を求めたことだ。
サムスン電子はテキサス州にファウンドリー工場を、SKハイニックスもインディアナ州に後工程の工場をそれぞれ建設中だ。
バイデン政権は巨額の補助金の支給を約束していたが、一気に不透明になってきた。
サムスン電子がテキサス州に建設中の工場は投資額が370億ドルという大規模拠点だ。
一つの工場としては超大型投資だが、バイデン政権の時は47億5000万ドルの補助金を約束していた。
万一の事態になれば事業計画に大きな影響を与えかねない。
2024年の米国向け半導体輸出額は103億ドル。もちろん主力大型製品群だ。高率関税が課せられれば、10%程度輸出が減るとの試算があり、大打撃になりかねない。
稼ぎ頭の自動車輸出
米政府による半導体産業支援策の先行きとともに、韓国政府と産業界がいま最も警戒しているのが、やはり自動車に対する関税だ。
韓米FTAの締結により、韓国から米国向けの自動車に対する関税はゼロだ。この恩恵もあって、韓国にとって自動車は最大の米国向け輸出品目だ。
2024年の輸出金額は340億ドルだった。米国向けの輸出総額の約3割を占める。対米自動車輸出は、韓国にとって稼ぎ頭なのだ。
このうち75%を現代自動車とグループ会社の起亜が占める。
米商務省によると、2024年の米国からみた自動車輸入相手国は、トップがメキシコで296万2000台、2位は韓国で153万6000台だった。
2023年までは日本が2位だったが、ここ数年、対米輸出を急増させた韓国が逆転してしまった。
サムスン証券が2024年7月に発表したリポートによると、2023年のメーカー別の米国での総販売台数に占める現地生産比率は、現代自動車が42.4%、起亜が32.5%。
これに対してトヨタ自動車54.7%、ホンダ77.8%、日産自動車63.2%だった。
韓国勢も米国での生産拠点拡大に動いているが、FTAがあったことで日本勢に比べて米国での販売台数に占める現地生産比率はずっと低い。
韓国メーカーが米市場での販売を伸ばそうとすれば、どうしても輸出に依存せざるを得ない構造なのだ。