中央経済工作会議に出席した習近平国家主席(12月10日、写真:新華社/アフロ)
(英エコノミスト誌 2025年12月13日号)
中国は輸出依存について慢心している。
中国の人々が「両会(2つの会議の意)」について話をする時、それは毎年3月に開かれる全国人民代表大会とその諮問機関の全体会議のことを指す。
だが、中国経済にとっては、これとは別に今月開催された2つの会議の方が重要な意味を持つことになるかもしれない。
つい先日、年に1度の中央経済工作会議(CEWC)が開催され、国の指導者たちが2026年の経済政策の方針を定めた。
また12月10日には、かつて中国第2位の不動産開発業者だった万科企業が債権者集会を開き、満期を間近に控えた社債の償還を1年延期させてほしいと要請した。
万科の集会は、中国の深刻な経済問題の原因である不動産不況がまだ終結にはほど遠いことを示す出来事だ。
だが、北京で行われたCEWCからは、国の指導者たちの関心がほかのことに向けられている様子がうかがえた。
技術的な自立では一定の成功
その一つがテクノロジーの自立だ。これについて言うなら、この1年は成功だった。
起業家精神の旺盛な浙江省に本拠地を構える人工知能(AI)企業のDeepSeek(ディープシーク)は、演算能力の制約にもかかわらず、中国が米国の最先端モデルと競い合えることを見せつけた。
また国家プロジェクト「中国製造2025」が始まって10年経った今、電気自動車(EV)の国内製造や再生可能エネルギー産業の面では目標を余裕で達成できている。
まだ自立できていない分野でも中国は安心感を強めている。強力な磁石や各種製品の部品で用いられる重要な原料「レアアース(希土類)」の独占的なシェアを効果的な経済兵器に変えることに成功した。
この武器を使えば、中国がまだ生産できない最先端の半導体やそのほかのハイテク部品などの流入を断とうという、西側諸国のさらなる試みを抑止するのに役立つだろう。
その一方で米国政府は、対中国の各種の制限を強化ではなく緩和する方向に傾いているように見える。
ドナルド・トランプ大統領は12月8日、エヌビディアのAI半導体「H200」の中国輸出を認めると述べた。最先端とは言えないものの、これまでに中国に販売されたどの半導体よりもはるかにパワフルな製品だ。
同じ日に開かれた会議で中国共産党中央政治局は、経済、化学、テクノロジーにおける中国の「ハードパワー」は「著しく向上した」と豪語した。
中国のテクノロジー面の高度化も、驚くほど強い輸出の底堅さに貢献してきた。
中国の税関当局によれば、今年1~11月期のモノの貿易黒字は1兆ドルを超え、過去のいずれの年の12カ月間の値をも上回った。
トランプ氏が一部の中国製品の関税率を145%超に引き上げた今年春には、このような大幅な黒字になるとはとても考えられなかった。
だが、中国から米国への輸出が減っても、世界のほかの国々への輸出がそれを補ってあまりある伸びを示した。
中国企業は米国に代わる新たな市場を見つけた。また米国への新しい迂回路も見つけ、その過程で最高税率を回避している。
大手金融機関ゴールドマン・サックスによれば、中国が今年増やした東南アジア諸国連合(ASEAN)向け輸出のうち70%は、中国から第三国を経由して米国に至る間接輸出で占められる。
