スイスのジュネーブで開催された米国とウクライナ政府高官による和平協議(左から2人目が米国のスティーブ・ウィトコフ特使、その右がマルコ・ルビオ国務長官、11月23日、写真:AP/アフロ)
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(英エコノミスト誌 2025年11月29日号)

トランプ式外交と謀略の不可解な1週間

 ウクライナでは1週間が長い。11月19日、ロシアと米国による秘密の「和平案」があるとの報道が流れた。ウクライナ国民にとっては、条件付きの降伏を要求しているような内容だった。

 週末までには欧州、ウクライナ、米国の高官がスイス・ジェネーブで緊急協議を行い、提案の修正に取り組んだ。

 そして11月26日、米国とロシアの交渉担当者は、修正された和平案について中東アブダビで行っていた話し合いを終えた。

 直近の交渉の様子を知る人々によれば、和平案はまだ流動的だ。ウクライナは最新版の方がいいと考えているが、ウラジーミル・プーチン大統領がこれに同意するとは誰も思っていない。

 和平プロセスは現在、ウクライナ側に不利な状況にあり、今後の話し合いではロシアの要求とウクライナの譲歩をすり合わせることが目標となる。そして最終的な決断はクレムリンが下すことになりそうだ。

キーウのパニックはひとまず落ち着いたが・・・

 だが、ウクライナの首都キーウでは、前の週のパニックと罵声が慎重な安心感に取って代わられた。

 ジュネーブでの話し合いにより、米国のスティーブ・ウィットコフ特使がロシアから大量のアドバイスを受けたうえで起案したと思われる当初案の28項目における最悪の部分が削られた。

 一方、19項目から成る新しい和平案では、ウクライナ軍の兵力の上限が当初案の60万人から80万人に引き上げられている。戦争犯罪人の特赦や、ロシアの凍結資産の一部を米国が得ることへの言及も削除されている。

 だが、解決が最も難しい問題のいくつかは、ドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との話し合いに委ねられた。

 ロシアからの領土の要求、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を禁じるための憲法改正、そして米国の「安全の保証」の厳密な内容などがその主なところだ。

 当初、11月27日にホワイトハウスで行われる予定だった両大統領の会談は延期された。