バブルが弾ける瞬間を生成AIが作図
(英エコノミスト誌 2025年12月6日号)
バリュエーションは忘れよ。注意すべきは検索件数と大物ファンドマネジャーの去就だ。
世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーターの創業者レイ・ダリオ氏は、ドットコム・バブルの発生を早くから見抜き、「米国株式市場が吹き飛ぶ局面に近づいている」と言った。
資産運用会社フィデリティのマゼラン・ファンドの運用で名を馳せたピーター・リンチ氏は「心配している投資家の数が十分でない」と考えた。
ジャンク債投資の草分けのハワード・マークス氏は非常に心配していた。「カクテルパーティーの客からもタクシーの運転手からも、全員が値上がりしている株やファンドの話をしたがる」からだった。
ジョージ・ソロス氏はイチかバチかでインターネット株を空売りした。
ウォーレン・バフェット氏は「ハイテク企業が10年後にどんな姿をしているか、どこが市場のリーダーになるのか自分には分からない」と言い、最初から手を出さなかった。
最終的には、全員が正解だった。
ハイテク株を多く含むナスダック指数は2000年3月にピークに達し、その後の2年半で80%以上下落した。
問題は、ダリオ氏とリンチ氏の上記の発言が1995年のものであり、マークス氏のそれが翌1996年のものだったことだ。
また、ソロス氏の空売りは1999年までに7億ドルの損失を同氏の旗艦ヘッジファンドにもたらし、撤退する過程で数十億ドルの費用が生じた。
同じ1999年には、バフェット氏も弁明の必要性を感じたかもしれない。
同氏の投資会社はそれまでの5年間にナスダック指数を年間平均で15ポイントもアンダーパフォームしていたからだ。1995年から2000年3月にかけて、同指数は1100%近く上昇していた。
AIバブルへの懸念
言い換えるなら、トップクラスの投資家であっても、バブルの形成に気づくことは破裂のタイミングを推測することよりもはるかに容易だということだ。
今では、新たなバブルができつつあると心配する人はいくらでもいる。テック企業の株価が――先月11月に見られたように――ほんの数%下落するだけで株価のボラティリティー(変動性)は跳ね上がり、トレーダーは不安に駆られる。
懸念の対象は人工知能(AI)関連株だ。
データ分析事業を手がけるパランティア・テクノロジーズがその好例で、同社株は来年の予想1株利益の200倍超という常軌を逸した水準に達している。
だが、とてつもなく高い水準にあるのはAI関連だけではない。
米国の大企業で構成されるS&P500種株価指数を過去10年間の平均利益の実質値で相対化した株価収益率(PER)の推移を見ていくと、現在の水準は1999年と2000年に次ぐ高さに達していることが分かる。
また、売上高で相対化した株価売上高倍率(PSR)に及んでは、ドットコム・バブルがピークだった頃の水準を60%も上回っている。


