精華大学で行われた国家最高科学技術賞の授賞式に出席した習近平国家主席(2024年6月24日、写真:新華社/アフロ)
(英エコノミスト誌 2025年12月6日号)
敵対的な政策と科学に対する攻撃が中国への帰国を促している。
米国のイノベーションの最前線にいるのは、中国生まれの頭脳明晰な人々だ。今年10月に死去したノーベル物理学賞受賞者の楊振寧(ヤン・チェンニン)氏もその一人だった。
だが、そうした人々を押し出す力(ドナルド・トランプ大統領の政権があらゆる種類の新参者に示している敵意など)と引き寄せる力(科学技術に対する中国からの惜しみない支援など)が働き、今ではヤン氏が後にたどった道を選ぶ人が多くなっている。
同氏は北京の清華大学で教鞭を執るために80歳代になってから中国に戻っていた。
今では米国留学を最初から選択肢に入れない中国の若者も多くなっている。
米国を支えるスーパースターは中国人
こうした変化はトランプ政権の1期目から進んでおり、今日では学生、科学者、テクノロジーの専門家という互いに重なる3つのグループで特に著しくなっている。
これにより、米国のトップクラスの大学と最も革新的な企業の両方が打撃を被ることになる。
中国出身の研究者たちはかなり前から、米国の外国人研究者のなかで最も大きな集団を形成している。
折しも世界の二大大国が激しい貿易戦争を続けている今、この「脱出」は中国とのテクノロジー競争における米国の最大の強みの一つを蝕むことになるだろう。
スーパースターを引き寄せ、そのまま国内にとどめる能力がそれだ。
といってもトランプ政権がそのように考えているわけではない。マルコ・ルビオ国務長官は今年5月、米国は「中国人留学生のビザ(査証)を積極的に取り消す」と語った(トランプ氏は後に、中国人留学生の受け入れを60万人増やしたいと述べ、この議論を明らかに混乱させた)。
9月には連邦議会の委員会が「From PhD to PLA(博士号から人民解放軍へ)」と題した報告書を発表し、中国人留学生をもっと制限するよう求めた。
これらの学生たちは将来的に中国の軍隊と関わりを持つ可能性がある、というのがその理由だ。
同じ9月にはトランプ氏が就労ビザ(査証)の一種「H1B」の新規発給申請に10万ドルの手数料を課すことを提案した。
これはテクノロジー企業が高度な技術を持つ外国人を米国内に招く時に多用してきたビザであり、中国人とインド人が最も影響を受ける。
